人生100年時代といわれる昨今、老後生活は長期に渡ります。そのため、生活の要となる住居の住み替えを検討する人が増えています。
しかし、老後の住み替えにはたくさんの罠が存在します。住み替えにより楽しい老後を過ごすために、まず何に注意するべきかを確認しましょう。
目次
老後の住み替えに潜む恐ろしい5つの罠
老後の住み替えに潜む5つの罠を紹介します。同じ罠にかかり、老後の生活が苦しいものにならないように注意しましょう。
長生きリスクと老後資金の不足
長生きリスクとはお金と健康の問題です。
長生きすれば当然お金がかかり、病気をしても治療にお金がかかります。しかも、医療の発達により寿命が伸びる代わりに治療が長引きます。さらには介護や認知症による出費も心配です。
つまり、何も考えず住み替えに大きなお金を動かすと、老後資金が不足してしまいます。長生きと病気や介護を想定して計画しましょう。
ローン審査の難易度
ローンで住み替え先を購入する場合、現役世代よりもローン審査は厳しくなります。
収入が下がっていることに加えて、年齢的に短期間のローンとなり毎月の返済額も増えるからです。住宅ローンの完済時年齢は80歳未満が条件となることが一般的であるため、一定以上の頭金を入れてローン比率を下げることが必要です。
また、仲介手数料などの諸経費も忘れずに計算しましょう。
賃貸住宅への入居が難しい
住み替え先を賃貸で考えている場合、高齢者は入居審査が厳しくなります。
理由は年金暮らしによる金銭面と健康不安による安全面です。1人暮らしの場合はさらに入居審査が厳しくなります。
これらの対策としては、資金計画や見守りサービス、身元保証サービスの活用などが有効です。
予想外の環境変化
老後は都心部から地方に住み替えてゆったり過ごしたいと思う人、地方から便利な都心部に住み替えようという人も多数います。これらによる失敗談は枚挙にいとまがありません。
理由は、調査不足です。都心部から地方への住み替えを例にした失敗事例は以下のようなものがあります。
- ・自然環境の違い:寒暖差や台風の多さ、気候の違いにより水道光熱費が今までよりかかることがある
- ・周辺環境の違い:車が必需品になりお金がかかることがある
- ・慣習の違い:近所付き合いや自治体活動が想像以上に多いことがある
上記のような理由から、金銭的・精神的負担が増えることがあります。
争族
住み替えには大きなお金が動きます。安易な住み替え計画は財産状況を悪化させてしまい、
争族の原因になることもあります。
たとえば、退職金を利用して一括払いで新築住宅を購入し、その後の資金計画も安易だったために手元資金が底をつくケースがあります。
こうなると相続発生時に財産が家のみで現預金がなく、子ども(相続人)が複数いた場合に争いが起きる可能性もあります。また、子ども達と遠く離れた場所へ住み替えた場合、将来もし介護になったときに一部の子どもだけに負担がかかると揉める原因が生じます。
住み替え計画では、家族へ相談して理解を得ることが重要です。
老後の住み替えで得られる生活とは
老後の住み替えは、耳の痛い話ばかりではありません。
老後の住み替え探しは、いいかえれば豊かで充実した老後生活探しです。このために今まで頑張ってきたといっても過言ではありません。
老後に潜む罠に注意したうえで、住み替えによる楽しい老後を過ごしましょう。
好きな土地で暮らせる
現役時代は通勤や子どもの通学などで居住地域に制約がありました。
しかし、老後は暮らす場所の制約から解放されます。静かな場所に住むのもよいですし、趣味が満喫できる場所を選ぶのもよいでしょう。
老後の住み替えは心情的なメリットが大きく、余生を謳歌できるでしょう。
老後のライフスタイルに適した住まいの確保
暮らす場所だけではなく住まい選びの制約も減ります。
子どもたちが独立したあとはコンパクトな住まいを選べるため、掃除の手間や修繕などの管理が楽になります。また、老後のライフスタイルの変化に応じて、バリアフリー・引き戸・スロープ・手すりなどのカスタマイズも可能です。
QOLが向上した老後生活
場所や住まいなどの物質的なことだけではなく、新天地での充実した暮らしはQOL(クオリティオブライフ)が向上します。
これは心身の健康に関わり、老後資金と同等に非常に重要なものです。一例として、今までマンション暮らしでできなかった家庭菜園も、一戸建てに住み替えると楽しめます。
生活費のコストダウン
一般的に老後の住み替えは夫婦のみの生活のため、コンパクトな家を選びます。
その結果、固定資産税や光熱費あるいは修繕・リフォーム費用のコストダウンにつながります。修繕・リフォーム費用については、住み替え先が新築あるいは従前よりも新しい家であれば一層コストダウンになります。
地方から都心部に住み替えた場合は車が不要になり支出が減ります。
きちんとした住み替え計画をきっかけとして、おざなりだったお金の管理が的確になり老後資金を強化できることが期待できます。
老後の住み替えにおいて外せないポイント
最後に、老後生活の住み替えを成功させるポイントについて、解説します。住み替えに潜む罠を排除して、満足のいく老後生活がおくれるよう準備しましょう。
資金計画
資金計画は最優先事項です。具体的には、「現状」「住み替え」「リスクヘッジ」の3つに分けて整理しましょう。
現状 |
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住み替え |
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リスクヘッジ |
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現役時代との違いとして、一般的に老後は収入と医療費が反比例します。現役時代の感覚で資金計画を立てるのは危険です。不動産会社やファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談しながら進めましょう。
時間と体力の計画
住み替えは想像以上に体力と気力を使います。
できれば体力・気力が充実している定年前の50代のうちから計画できると理想的です。時間に余裕を持つことにより計画の見落としを防ぎ、新たな発見が生まれることもあります。
住み替え先・方法の選別
購入か賃貸か、一戸建てかマンションかなど住み替え先の選択肢はさまざまです。
一戸建てであれば省エネルギー住宅、マンションであればサービス付き高齢者住宅のようなシニア向け住宅の検討と多種多様にあります。
また、住み替えの方法は単に購入または賃貸だけではありません。住み替え費用と老後資金の調達方法として、リバースモーゲージやリースバックというものもあります。
リースバックは、自宅を売却しても住み続けることができるサービスで、売却後は賃貸契約を結びます。 リバースモーゲージは、自宅を担保に融資を受けるサービスで、本人が亡くなったあとに担保を売却して返済する方法です。
それぞれの選択肢を比較検討し、後悔のない選択をしてください。
環境の下見と介護・病気・災害対策
一口に環境といっても、自然環境・周辺環境・地方特有の慣習などさまざまです。
周辺の安全状況および気候や寒暖差については、できれば春夏秋冬すべてで下見できると理想的です。可能であれば現地で宿泊してみましょう。
自治体としてどんなサービスや支援がある地域なのかを、役所で調べることも有益です。
また、老後は健康不安や足腰が弱ったりします。加えて車の運転もいつまでもできるとは限りません。公共交通機関や病院、介護施設、スーパーも調査しましょう。
専門家への相談
老後の住み替えは終の棲家となります。成功するためには多くの確認・検討事項があります。
しかし、一般的にほとんどの人は住み替え経験が少ないので、すべてを網羅することは難しいです。時間・労力を省き住み替えを成功させるためにも、専門家である不動産会社に相談することは非常に有益です。まずは気軽に相談してみましょう。
住み替えに関する流れや費用、タイミングなどに関してはこちらでも詳しく紹介しています。
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