40代は、子育てや老後の準備など、さまざまな場面で住み替えを考える時期です。
とはいえ、住み替えには多額の資金が必要となり、ローンの審査や住み替え先の選定など、クリアすべき課題は数多くあるため、簡単にできることではありません。
では、40代の住み替えをスムーズに進めるにはどのようにすればいいのでしょうか。
40代の住み替えをスムーズに進めるためにおさえておくべき4つのポイントを詳しく解説します。
40代は住み替えに適した年代
40代は、ライフステージの変化に伴い、住宅に対するニーズが大きく変わる時期です。子どもの成長や独立、老後の生活を見据えた住環境の改善など、様々な要因が住み替えを検討するきっかけになっています。
また、40代は一般的に収入が安定し、キャリアも確立されてくる時期であるため、経済的にも住み替えが可能な状況にあることが多い傾向にあります。
こうした背景から、40代で住み替えを検討・実施している方々が非常に多くなっていると考えられるのです。国土交通省住宅局の調査によると、分譲住宅を除くすべての居住形態において、40代で住み替えを行った割合が最も高いことがわかります。
年代/住み替えた 居住形態 | 注文住宅 | 分譲住宅 | 分譲マンション | 中古戸建 | 中古マンション |
30代 | 7.3% | 27.8% | 7.6% | 10.0% | 8.9% |
40代 | 55.5% | 19.4% | 40.5% | 45.0% | 51.8% |
50台 | 19.0% | 8.3% | 25.3% | 21.3% | 16.1% |
60代 | 18.2% | 33.3% | 22.8% | 20.0% | 19.6% |
40代の割合が高くなっているのは、住み替えを後押しする外部的な要因もあると考えられます。こうした内外の要因が相まって、40代で住み替えを検討・実施している方々が非常に多くなっていると言えるでしょう。
安定した収入があるので住宅ローンの審査が通りやすい
40代で住み替える人が多いのは、住宅ローンの審査に通過しやすいのが理由のひとつです。40代は、重要な仕事を任されるようになり、20代や30代の給与所得者と比べて収入が高くなる傾向にあります。また、それに伴い勤続年数も長くなるでしょう。
金融機関では、住宅ローンの申込者の職業、年収、そして勤続年数を慎重にチェックしますが、40代の申込者は、これらの条件を満たしている可能性が高くなります。そのため、金融機関からローンの返済能力が高いと評価されやすくなるのです。
住み替えをしたくても、住宅ローンが組めなければ実現は難しくなります。しかし、40代であれば、住宅ローンの審査に通過しやすくなるため、住み替える人が多くなっているのです。
家が築浅で高く売れる可能性がある
住み替えを行う際、現在住んでいる自宅の売却代金を、新しい家の購入資金に充てるケースがあります。
この場合、現在の家が高く売れるほど、新しい家の購入に必要な住宅ローンの額が減るため、住み替えがしやすくなります。
家の売却価格を左右する要因の一つが築年数です。一般的に、築年数が浅いほど需要が高く、高値で売却できる傾向にあります。
40代で住み替えを考える人の中には、現在住んでいる家を新築で購入しているケースも少なくありません。その場合、住み替えのときに築年数がまだ浅いことも多く、高く売れる可能性があるといえます。築浅の家を高く売却できれば、得られた資金を元手として、家族のニーズにより適した新しい家へ住み替えるでしょう。
40代で住み替えをする場合、現在住んでいる自宅が高く売れやすいことも、住み替えを後押ししている理由の一つと言えます。
将来を見据えた物件を選べる
40代は、ある程度将来設計が固まっているので、長期的に住める家を選ぶことができます。20代や30代で購入した家は比較的小さく、結婚や出産などで家族が増えて手狭になることがあります。また、転職や転勤などで住む場所を変えるケースも出てくるでしょう。
一方、40代では家族構成が決まっている場合が多く、仕事についても住む場所がほぼ決まっているため、老後を見据えた住宅選びが可能です。
たとえば、子どもの独立を見据えて、夫婦二人で暮らすのに適した広さや間取りの家を選べます。さらに、高齢期を見越して、バリアフリーや段差の少ない物件を選ぶことも可能です。
このように、40代は人生の転機に合わせて、長期的な視点で住宅を選べる年代なのです。これらの点を踏まえると、40代は将来も安心して生活できる物件への住み替えを検討するのに適したタイミングだと言えるでしょう。
40代で住み替えるならおさえておくべき4つのポイント
40代で住み替えをするならメリットばかりではなく、リスクにも注目し、自分や家族の生活に重大な影響が出ないよう配慮しましょう。
住み替えの際の注目ポイント4点をそれぞれ解説します。
- 資金計画を入念に練る
- 住み替えローンの仮審査を受けておく
- 住み替え先の目途を立てておく
- 信頼できる不動産会社を選ぶ
1.資金計画を入念に練る
40代で住み替えを検討する場合、資金計画を入念に練る必要があります。
十分な資金計画なしに住み替えを行うと、無理なローンを組んだことによる生活の困窮や、ローンの返済ができなくなるといったリスクがあります。
特に40代は、子どもの教育費や老後の資金準備など、他の資金需要も多い時期です。住み替えに伴う資金を見誤ると、将来設計に影響を与える可能性もあるでしょう。
今住んでいる自宅の正確な評価額を把握し、住宅ローンの残債と金利負担を再確認すること、そして、新しい住まいの購入予算と諸費用を詳細に積算することが不可欠です。
場合によっては、専門家に相談し客観的な意見を求めることも検討すべきでしょう。
オーバーローンに要注意
住宅ローンの残債がある場合はオーバーローンに注意が必要です。オーバーローンは、住宅ローンの残債が不動産の価値を上回っている状態をいいます。
住宅ローンが残っている不動産は、金融機関が抵当権を設定しているため、完済をして抵当権を抹消しなければ売れません。不足分は、自己資金で補填する必要があるため、家の売却が非常に困難です。
そのため、不動産会社から査定してもらい、オーバーローンとなるかどうかも忘れずにチェックしておく必要があるのです。
なお、オーバーローンの場合、住宅ローンの残債分と新居の購入資金を一緒に借りられる「住み替えローン」も検討してみましょう。
今住んでいる自宅の価値は不動産会社の査定で調べる
住み替えにあたり、自宅の価値を正確に把握する方法が不動産会社の査定です。
不動産会社の査定では、専門家が自宅を訪問し、物件の状態や立地、市場動向などを総合的に判断して、価値を算出してくれるため、実際の売却価格に近い金額を算出できます。
また、自身でもあらかじめ、不動産物件ポータルサイトなどで周辺で売りに出されている同じような物件の価格相場などを把握しておくことで、不動産会社の査定額が相場と比較してどうなのか、著しく高い・低い場合にはその根拠を確認するようにしましょう。
2.住み替えローンの仮審査を受けておく
オーバーローンになるとわかった場合は、住み替えローンを利用するため、金融機関に仮審査を申込みましょう。住み替えローンを利用すれば、家を売却しても完済しきれない住宅ローンの残債分を、新たに購入した家へ上乗せして借りられます。
住み替えローンが利用できれば問題なく、現在の家を売却し住み替えが可能となります。ただし、住み替えローンを必ず利用できるとは限りません。
そのため、事前に金融機関の仮審査を受け、審査に通るかどうかを確認した後、住み替えを検討した方が良いでしょう。
仮審査の審査内容は主に次の通りです。
- ローン利用者の年収・返済能力
- 借り入れ金額に無理がないかどうか 等
なお、仮審査に通過したからといって、本審査で必ず住宅ローンが組めるとは限りません。仮審査はあくまでも簡易的な審査です。本審査ではより詳細な財務状況や信用情報がチェックされます。そのため、仮審査の結果に満足せず、本審査に向けて万全の準備を進めることが大切です。
3.住み替え先の目途を立てておく
住み替え先をどこにするか、しっかりと決めてから現在の家を売却しましょう。もちろん資金に余裕があれば新たな家を購入後、現在の家を売却しても構いません。
買い先行で対応できるなら、すぐ住み替え先に住めるので賃貸住宅を借りる必要はなく、売却を急ぐプレッシャーからも解放されます。
逆に、住み替え先が決まらない状態で現在の家を売却すると、賃貸住宅に住む期間が長引き、賃料が重い負担となるおそれもあります。
売り先行の場合も住み替え先の目途を立てた後で、現在の家の売却を進めていきましょう。
4.信頼できる不動産会社を選ぶ
家を売却するときは、信頼できる不動産会社へ依頼をしましょう。
現在の家を自分が希望する売却価格で売れるのか、売却までどれ位の日数がかかるかは不動産会社の担当者次第です。もちろん、親交のある不動産会社がいればそちらに頼んでも構いません。
しかし、複数の不動産会社の中から選ぶ際は、注意しなければいけない点があります。それは複数の不動産会社に査定を依頼したら、他より飛びぬけて高い査定額を出した会社がいたという場合です。
高い査定額を出した不動産会社と、安易に仲介契約を結んでしまうと、次のような事態になるおそれがあります。
- 査定額よりも大幅に低い売却価格でしか売れなかった
- いつまで経っても買い手が見つからない
そのため、高い査定額が気になったら、その根拠について担当者へ質問しておきましょう。
担当者が回答をはぐらかしたり、根拠もなく単に自信があるという返答しかしなかったりしたら、別の不動産会社を探した方が安全です。また、大手の不動産会社の他、小さくとも地元密着型の不動産会社に相談するのも良い方法と言えます。
地元密着型の不動産会社なら地域の情報に詳しいので、条件に合った買い手を早く見つけてくれる可能性が高いです。
40代で住み替えるなら戸建?マンション?
40代の自分や家族に合った居住形態へ住み替える必要があります。
こちらでは、戸建て・マンションそれぞれのメリット・デメリットを解説しましょう。
戸建てに住み替えるメリット・デメリット
戸建てに住み替える最大のメリットは、ゆとりのある空間で家族団らんを楽しめることです。戸建ては、部屋数も多く、プライバシーも確保しやすいため、家族それぞれの趣味や活動を思う存分楽しめます。また、ペットを飼うことも可能です。
マンションのような管理規約もないため、自由度の高い生活が送れます。特に老後は、隣近所への気遣いなく、夫婦二人の生活を自分たちのペースで満喫できるでしょう。
一方で、戸建ての大きなデメリットは、修繕費用が全て自己負担となることです。屋根や外壁の塗装、設備の交換など、家の老朽化に伴う修繕費用は高額になる可能性があります。定期的なメンテナンスを怠ると、家の資産価値が下がってしまうリスクもあります。
また、戸建ては階段の上り下りが多いため、高齢になると移動が大変になるケースもあります。将来的なバリアフリー化なども視野に入れる必要があるでしょう。
このように、戸建ての住み替えには、ゆとりある生活空間や自由度の高さなどのメリットがある一方で、修繕費用の負担や高齢化に伴う課題などのデメリットも存在します。これらを総合的に判断して、自分たちのライフスタイルに合った選択をすることが大切です。
マンションに住み替えるメリット・デメリット
マンションに住み替えるメリットの一つは、利便性の高さです。マンションは駅やバス停に近い立地に建てられていることが多く、交通機関を利用しやすいため、日常生活における移動が楽になります。
また、マンションは、オートロックシステムや監視カメラの設置など、セキュリティ面での充実が図られていることが多いです。これにより、安心して生活できます。
子どもが独立した後の夫婦二人の生活には、マンションの間取りが適している場合があります。広すぎず、かつ必要十分な広さがあれば、掃除などの家事の負担を軽減できます。
さらに、マンションは基本的にバリアフリー設計になっているため、高齢になっても安全です。
一方で、マンション特有のデメリットもあります。管理規約により、ペットの飼育や内装の変更など、生活スタイルに制限がかかる場合があります。
また、管理費や修繕積立金など、毎月の支払いが発生します。これらは、戸建てに比べて余分な出費となります。
加えて、隣室の音が気になるなど、プライバシーの面で問題が生じることもあります。
このように、マンションへの住み替えは、利便性や安全性、管理の手軽さなどのメリットがある半面、規約による制限や費用負担、プライバシーの問題などのデメリットもあります。
40代の方々がマンションへの住み替えを検討する際は、これらのメリットとデメリットを十分に理解し、ライフスタイルに合った選択をしましょう。
住み替えに関する流れや費用、タイミングなどに関してはこちらでも詳しく紹介しています。
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