少子高齢化などが原因となり、社会問題になっている空き家は今後も増加傾向にあるため、国や地方自治体もさまざまな対策を実施しており、空き家は有効活用もしくは売却することを推奨しています。
では、具体的に空き家はどのように売却、または活用すればよいのでしょうか。売却にかかる費用や利用できる制度なども解説します。
目次
空き家の売却方法
空き家をスムーズに売却するためには、まずは売却方法を把握する必要があります。空き家の売却方法は以下の3つです。
・中古戸建てとして売却する
・更地として売却する
・古家付き土地として売却する
売却するときには複数選択することも可能なため、特徴を確認したうえで最適な方法を選択しましょう。
中古戸建てとして売却する
空き家をそのまま中古戸建てとして売却する方法は、所有者にとってもっとも手離れがよくシンプルな売却方法です。建物の解体費用も必要なく、破損している部分の修復も不要なケースもあります。
破損部分の修復が不要な理由は、所有者は売却するときに破損箇所を明記し、その内容に合意した買い手と契約に至るためです。つまり、買い手はあらかじめ破損箇所を把握したうえで購入するため、トラブルに発展することはありません。そのため、長年放置しており破損箇所などが不明確な戸建てを保有している場合は、中古戸建てとして売却することをおすすめします。
一方、築年数が30年以上経過している場合や破損箇所が多い中古戸建ては買い手が付きづらく売却が難しいケースもあります。そこで、まずは売却前に不動産会社へ相談し、中古戸建てとして売却が可能か確認しましょう。
更地として売却する
戸建てではなく、土地として売却する「更地渡し」という方法もあります。解体費や測量費はかかるものの売買契約後に解体するため売却益から支払いができ、所有者が先に手持ち資金を用意する必要はありません。
買い手としても建物の解体を引き渡し後に行う必要がなく、購入の決断がしやすいです。しかし、土地として売却するため、土地自体に価値がないと売却できません。立地が悪い場合や形がいびつな土地だと売却することが難しく、売却価格が大幅に低くなるケースがあります。
古家付き土地として売却する
土地として売却する際に所有者が古家を解体してから引き渡すことが多いですが、所有者が解体をせずに古家付きのまま売却することも可能です。
この場合は解体費分だけ売却価格を下げて販売するケースが多いため、買い手が見つかりやすいというメリットがあります。また、買い手の希望によっては中古戸建てとしての売却も可能なため、空き家の売却ではよく使われる方法です。
しかし解体しないことから、土地が狭い場合などはこまかい土地形状がチェックできずに、引き渡し後にトラブルが発生するおそれもあるため、注意が必要でしょう。
なかなか売れない場合の処分方法
築年数が経過した空き家であったり立地が悪かったりする場合は、売却が長期化することがあります。その場合は不動産買取を検討しましょう。不動産買取は市場で買い手を探すのではなく、不動産会社が直接購入する処分方法です。
通常の売却では不動産会社に販売依頼をして物件を公開し買い手を募集しますが、買取は募集をせず不動産会社から買取価格が提示されます。そして、所有者が買取価格に合意することで売買契約が締結されます。
この処分方法は通常の空き家売却とは異なり、不動産会社に相談した翌週に売買契約、翌月には引き渡し、というように大変スムーズな売却が可能です。市場で売却するよりも売却価格が下がってしまう傾向にありますが、売却期間が長期化している空き家は買取を検討しましょう。
空き家の売却にかかる費用や利用できる制度
空き家を売却する際には諸費用がかかり、売却益をそのまま手に入れられるわけではありません。また、空き家を処分することに対し地方自治体から助成金がでることがあります。
空き家を売却する際に必要となる諸費用と、利用できる制度を愛知県名古屋市を例に解説します。
空き家の売却時にかかる諸費用
空き家を売却した際にかかる諸費用は、以下のとおりです。売却後に慌てることがないよう、事前にチェックしましょう。
諸費用項目 | 概算費用 | 備考 |
---|---|---|
所有権移転費用 | 約1万円 | – |
解体費 | 約120万~150万円 | 木造2階建て100㎡の場合 |
確定測量費 | 約50万~70万円 | 愛知県で50坪の場合 |
印紙代 | 約数千~数万円 | 売却価格によって変動 |
空き家の売却後に税金がかかる?
空き家を売却したあとに「譲渡所得税」という税金がかかるケースがあります。譲渡所得税は売却によって生まれた利益にかかる税金で、所有期間や所有状態によって変わります。
たとえば3,000万円で購入した物件が3,500万円で売却できた場合は、利益となる500万円に対して税金がかかります。
ただし、昭和56年より前に建築された空き家を相続し売却した際には「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」を利用できる可能性があり、この場合は譲渡所得課税額(上記の例では500万円)を3,000万円まで控除することができます。
空き家を売却する際には諸費用と税金について不動産会社へ確認し、損のないようにしましょう。
空き家売却に利用できる制度
自治体によっては、特別な支援制度や補助金を活用できることもあります。たとえば、名古屋市では「名古屋市老朽危険空家等除却費補助金」という制度があり、老朽化などを理由に倒壊など危険な状態になっている空き家の除却費用に対し、一部を補助しています。
この制度は所有者が申請し、職員が現地を調査することで「危険度」を判定し、工事費用の1/3(最大40万円)もしくは2/3(最大80万円)の補助を受けることが可能です。
木造2階建て100㎡の家を解体する場合、おおよそ120万〜150万円の解体費が必要となるため、築年数が経過した空き家を売却する際には申告しましょう。
このように、各自治体で活用できる制度を調べておきましょう。
空き家の売却は早めの行動が重要
空き家の売却は早めに進めることが重要ですが、その理由について解説します。
空き家は今後増加し、供給過多になる予想
国土交通省は、2030年には空き家の数が全国で470万戸程度になると発表しており、地方自治体の人手や財政では対応が追いつかなくなる点を懸念しています。
地方自治体の対応が追い付かなくなると、現在各地方自治体が実施している助成金制度などが打ち切られるなど、ますます空き家の売却や活用が難しくなるおそれがあります。
倒壊のおそれがある空き家は売却方法が限定される
空き家が倒壊するおそれがでてから売却をしようとしても、なかなか買い手が見つからず販売が長期化するおそれがあります。
また、万が一倒壊や火災が発生した場合には所有者が責任追及されることになり、そのような事故が起きてからではさらに売却することが難しくなるでしょう。
放置すると特定空き家に認定されるおそれがある
空き家は放置することで倒壊や火災のリスクが増加し、さらには「特定空き家」に認定されてしまいます。特定空き家とは、そのまま放置をすると周囲に危険を及ぼすおそれがあると判断された空き家のことです。
特定空き家に認定されることで、強制解体命令や固定資産税優遇の撤廃などの罰則を受けることにもなります。
また、2023年1月には国交省が「空家対策特別措置法」を改正する方針を固めたことが報道されました。管理が不十分な空き家を「管理不全空き家」と規定し、行政の指導に従わない場合は、固定資産税の優遇処置が解除されるようです。
有効活用していない空き家を保有している場合は早めに売却し、将来のリスクに備えましょう。