1月1日時点で、土地や建物を所有していると、固定資産税の支払い義務が生じます。では、1月1日に新築住宅を建築中の場合、土地や建物にかかる固定資産税はどうなるのでしょうか。また、もし支払い義務が生じるのであれば通常利用できる軽減措置は適用されるのでしょうか。
この記事では、新築住宅の建築中における固定資産税についてわかりやすく解説します。
目次
固定資産税の基本をおさらい
固定資産税は、固定資産の保有者に課税されます。土地、家屋および償却資産を保有している限り支払う必要があります。多くの人にとって課税の対象になるのは、自宅の土地と建物でしょう。まずは固定資産税の基本をおさらいしましょう。
1月1日時点の所有者に課せられる地方税
固定資産税は、1月1日時点の不動産の所有者に対して課税される税金です。1月1日時点の所有者になるので、1月3日に所有者になったとしても、固定資産税の支払い義務は以前の所有者、つまり1月1日時点の所有者になります。
また、固定資産税は地方税です。印紙税や所得税などの国税とは異なり、自治体ごとに支払い方法や未払い時のペナルティは異なります。
固定資産税の求め方
固定資産税は以下の計算式で求められます。
固定資産税=課税標準額×1.4%
課税標準額とは、固定資産税などの税額を計算するための価額です。不動産を購入した価格ではないので注意してください。課税標準額は3年ごとに見直されます。課税標準額の目安は、土地が公示地価の7割程度、建物は建築費の6割程度となります。
固定資産税には軽減措置がある
固定資産税には軽減措置が設けられています。納税者の負担を減らすのが目的ですが、事前に申請をしなければ適用されません。建物が完成次第「住宅用地等申告書」を自治体に提出します。申請期限は建物の工事が完了した年の翌年1月31日までとなります。申請期限が過ぎると軽減措置は適用されないので注意してください。
土地
住宅用地(土地)に対しては、小規模宅地等の特例が受けられます。軽減の内容は以下のとおりです。なお、住宅用地とされるのは土地の上に建物が完成していることが条件です。
軽減措置の内容 | 課税標準額×1.4%×1/6(住宅用地の200㎡以下の部分) | 課税標準額×1.4%×1/3(住宅用地のうち200㎡を超える部分) |
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住宅用地(土地)であることによって最大6分の1の軽減措置が受けられます。更地は固定資産税が高くなるといわれる理由は、更地ではこの軽減措置が対象外となるためです。
建物
新築住宅については、一定期間固定資産税が1/2 に減額されます。
住宅種類 | 減額される期間 | 適用範囲 |
---|---|---|
一般住宅 | 3年間 | 床面積 50㎡以上280㎡以下の物件 居住部分の120㎡までが対象 |
認定長期優良住宅 | 5年間 | 同上 |
軽減される期間は、新たに課税される年から3年間(認定長期優良住宅は5年間)となり、期間経過後は、通常の税率に戻ります。居住部分の120㎡までが対象なので、床面積が120㎡以下の住宅は全部が対象に、120㎡を超える住宅は120㎡までが減額の対象です。
1月1日時点で建築中の新築住宅にかかる固定資産税
1月1日時点で新築住宅を建築中の場合、土地や建物に固定資産税の支払い義務は生じるのでしょうか。また、支払い義務が生じる場合、軽減措置の適用は可能なのでしょうか。
建築中の新築住宅にかかる固定資産税について、以下の条件でシミュレーションします。
土地の条件 | 建物の条件 |
---|---|
土地の固定資産税評価額:3,000万円 土地面積:150㎡ 土地購入日:令和4年4月1日 | 建物の固定資産税評価額:1,000万円 床面積100㎡ 建物の完成予定日:令和5年1月10日 |
年をまたぎ建物が完成した場合
令和5年1月1日時点で建物が未完成だと、当然建物には課税義務がありません。課税の対象となるのは土地のみです。建築途中の土地は、更地とみなされるため、軽減措置は適用されません。
更地は軽減措置の対象外のため、計算式は以下のとおりです。
3,000万円×1.4% =42万円
令和5年1月1日時点で建物が未完成の場合、固定資産税は土地の42万円のみとなります。
年内に新築住宅が完成した場合
令和5年1月1日までに家が完成したら、土地・建物ともに固定資産税の支払い義務が生じます。この場合では、土地・建物のどちらも軽減措置の対象となります。計算は以下のとおりです。
【土地】
土地の面積が150㎡なので、200㎡以下の小規模住宅用地に該当します。
3,000万円×1.4%×1/6=7万円
【建物】
建物面積が120㎡までの部分は 3年間1/2で計算されます。
1,000万円×1.4%×1/2 =7万円
上記のとおり、令和5年の固定資産税額は、土地・建物合わせて計14万円となります。建物の完成が年をまたいだ場合と比べると大きな差が生まれます。固定資産税の軽減の恩恵を受けるためには、極力年をまたがずに、年内の12月31日に近い日に建物完成を目指すとよいでしょう。
なお、建物に対する軽減措置は期間が限定されるため、 4年目から(長期優良住宅の場合は6年目から)は通常の税率に戻ります。
1,000万円×1.4%=14万円
あくまでも税率が戻るだけなので、増税となるわけではありません。
固定資産税の支払うタイミングや注意点
注文住宅は、土地と建物の購入タイミングがばらばらになるため、初回の固定資産税の支払いタイミングはそれぞれ異なります。
土地の初回納付時期
固定資産税は、1月1日時点での所有者に支払い義務があります。しかし、1月2日以降に所有権を持った買主が、その年の固定資産税を支払わなくていいのかというと、そうとは限りません。
通常、土地の引渡日を基準として、売主から「固定資産税精算金」が請求されます。固定資産税を土地の所有期間によって日割りで按分し、引き渡し後の分は買主が負担するという趣旨です。つまり、土地を購入した年は納税義務がありませんが、引渡し後の分の固定資産税は売主に対して売買決済時に支払うということです。
建物の初回納付時期
建物が建った翌年1月1日を基準にして、5月初旬に納税通知書が送られてくるのが一般的です。
納付期限は6・9・12・翌2月など、年4回の分割として期限を設けられていることが多いですが、一括支払いも可能です。期限は自治体によって異なるので、あらかじめ確認しておきましょう。納税通知書と振込用紙がセットで送られてくるので、誤って廃棄しないように注意してください。
固定資産税の納付の注意点
固定資産税の支払いが遅れると、ペナルティが課せられます。こちらも自治体によって異なりますが、最大年14.6%の延滞金が課せられるケースもあります。
延滞が続き、自治体から催告書が来ても支払わないままだと、物件や給与が差押えの対象となってしまうので十分注意してください。振込用紙を紛失し再発行を依頼しても、その分期限が延長されるわけではありません。紛失にも注意しましょう。
納付方法は銀行振込の他に、コンビニ支払いやクレジットカード払いができる自治体も増えてきています。クレジットカード払いは、ポイントが貯まる一方で手数料がかかることがあるので、納税通知書などで確認してください。