不動産を探す際、ハザードマップを重視する人も多くなりました。ハザードマップに含まれた物件はなかなか売れない、という印象があります。
自宅や所有する不動産がハザードマップに含まれることで本当に売却が難しくなるのでしょうか。また、今後、ハザードマップの影響で地価が下落してしまい、売却価格を下げる必要がでてくることはあるのでしょうか。
この記事では、ハザードマップと不動産価値の関係性、ハザードマップに含まれる不動産の売却について解説します。
目次
高まる防災意識、ハザードマップの重要性とは
災害の多い日本では、防災意識が年々高まっており、不動産売買においてもハザードマップを無視して進めることはできません。買い手も浸水エリアや地盤の堅さについては神経質になることも多く、市区町村としてもハザードマップの更新や精度向上に注力しています。
自然災害が多い
ハザードマップが重要になる理由として、近年多くの自然災害が発生しているという背景があります。過去10年間で次に挙げるような災害が発生し、その度に該当する市区町村のハザードマップは更新してきました。今や自然災害は日本のどこにいても無関係とは言い切れません。
年 | 災害 |
---|---|
2009年 | 駿河湾地震 |
2011年 | 新燃岳噴火・東日本大震災・台風12号(紀伊半島豪雨) |
2013年 | 台風26号(伊豆大島土砂災害) |
2014年 | 御嶽山噴火 |
2016年 | 熊本地震 |
2017年 | 九州北部豪雨 |
2018年 | 大阪北部地震、北海道胆振東部地震 |
2019年 | 九州北部豪雨、台風15号(令和元年房総半島台風)台風19号(令和元年東日本台風) |
2020年 | 豪雨(熊本豪雨) |
2021年 | 伊豆山土砂災害 |
不動産売買契約時にハザードマップの説明が義務化
国土交通省は2020年8月より、取引される物件が水害ハザードマップに該当するかどうかを重要事項説明にて説明することを義務化しました。重要事項説明とは、不動産の契約に先立って、物件の重要事項を買主や借主に説明するものです。
これにより、不動産会社は重要事項説明書にハザードマップの種類を記載し、物件がハザードマップに含まれるかどうかを図示し、説明する必要があります。具体的にはハザードマップを買い手の前で広げ、マップに図示して確認させることでハザードマップの該当有無について誤認が起きないように説明します。
ハザードマップの種類は多岐にわたる
ハザードマップは洪水のほかにも以下のように、さまざまな種類があります。すべてのハザードマップを市区町村が用意しているわけではありませんが、売却予定の不動産が該当しているハザードマップがないか、チェックするようにしましょう。
ハザードマップの種類 | 内容 |
---|---|
洪水 | 河川氾濫によって浸水被害が予想されるエリア |
内水 | ゲリラ豪雨などで下水処理能力以上の雨が降り、浸水被害が予想されるエリア |
高潮 | 台風接近などにより高潮が発生し、浸水被害が予想されるエリア |
津波 | 大地震などで津波による被害が予想されるエリア |
土砂災害 | がけ崩れや土石流などの被害が予想されるエリア |
火山 | 火山噴火レベルに応じた被害が予想されるエリア |
地震 | 地震規模によって被害が予想されるエリア |
ハザードマップに含まれても地価は下落しない
ハザードマップに含まれているとしても不動産の地価は下落しません。これは、あくまでもハザードマップを懸念するかどうかは買い手の問題となるため、不動産自体に影響はしないためです。
不動産売買においては、以下で紹介するポイントを抑えておくことが重要です。
基準地価と実勢価格には影響しない
基準地価とは、都道府県が毎年公開する標準価格のことです。不動産鑑定士が不動産の流通性や価値変動などを精査し、算出します。しかし、ハザードマップに含まれるかどうかという算定項目はありません。そのため、基準地価にはハザードマップは関連しないということになります。
一方、実勢価格とは実際に売却された価格のことです。これについてもハザードマップは影響しません。なぜなら、販売価格は売主が決定するため、ハザードマップに含まれるからといって相場よりも安くする必要はないからです。
人気のエリアであればハザードマップの内容に関係なく不動産売買は行われます。このように、実勢価格はハザードマップに含まれるかどうかではなく、エリアの希少性や周辺環境とのバランスによって決まります。
つまり、ハザードマップに含まれる不動産だからといって地価が下落するわけではありません。
災害が起きない土地はない
そもそも、日本において災害が起きないと言い切れる場所はなく、必ず何かしらの災害リスクを含みます。そのため、買い手はある程度の災害リスクを承知で購入を検討します。
耐震や耐水害性能が備わっている住宅を選択したり、火災保険の浸水対策を追加したりすることで対応する買い手がほとんどです。つまり、ハザードマップに含まれている物件だからといって売却できないわけではありません。
また、ハザードマップはあくまでも想定エリアとなっており、必ず想定どおりの被害が起きるわけではありません。洪水ハザードマップに関しては、「1000年に1度程度」の想定がされています。また、マップにある被害が起きないような対策を市区町村は行っています。
ハザードマップに含まれる不動産の売却について
ハザードマップに含まれる不動産でも売却は可能です。しかし、通常の物件と同様に売却できるわけではありません。不動産売却で後悔しないよう、次に紹介するポイントを抑えておきましょう。
警戒レベルによっては問題なく売却できる
ハザードマップには、警戒レベルというものがあります。警戒レベルが高いほど、災害リスクが高いエリアになります。
「警戒レベル1」のように、一番低いレベルであれば、さほど気にすることなく売却できるでしょう。そのため、ハザードマップに含まれるかどうかを確認すると同時に、警戒レベルについても把握しておくようにしましょう。
実際に被害があった場合は難しい
実はハザードマップに含まれているかどうかよりも、実際に被害があったかどうかの方が重要です。たとえば、浸水実績や土砂災害の被害があった不動産の場合、河川拡張工事やがけ造成工事がされていないのであれば同様の被害が起きるおそれがあります。
また、土砂災害特別警戒区域に指定されている場合は売主の判断で自由に売却ができないケースもあります。そのため、実際の被害有無と不動産があるエリアについて災害対策を市区町村が行っているかどうかが重要なポイントになります。
不動産買取を検討する
ハザードマップに含まれている物件は売却できるものの、買い手が気にしないわけではありません。そのため、販売が長期化するおそれはあります。
不動産を一般公開し買い手を探しても見つからない場合、不動産買取を依頼するという選択肢もあります。不動産買取とは、市場にて買い手を探すのではなく、不動産会社に直接買い取ってもらう売却方法です。売却価格が安くなってしまうというデメリットはありますが、買い手を探す手間がかからず、短期間での売却が目指せます。
長期間販売している間に、自然災害によって被害を被ってしまうことも考えられます。そのため、ハザードマップに含まれている物件は不動産買取も検討しましょう。
売却の相談は、そのエリアに強い不動産会社へ
ハザードマップに含まれている物件の売却には、災害対策やそのエリアの希少性について詳しい不動産会社に依頼することが重要です。
買い手はハザードマップに含まれていることで、過去の被害実績や、避難場所など、多くの不安や疑問を抱きます。そのエリアに詳しくなく、買い手の疑問に答えられなければ、買い手の不安は解消されず、購入の決断はできません。
そのエリアに詳しい不動産会社に売却を依頼することで、適切な売却活動でサポートしてくれるでしょう。