土砂災害警戒区域の土地価格相場。指定区域の推移や売却の可否についても解説

土砂災害警戒区域とは、国土交通省により次のように定められた区域のことです。

「土砂災害による被害を防止・軽減するため、危険の周知、警戒避難体制の整備を行う区域」

国土交通省「土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等について」

つまり、土砂災害警戒区域は他の土地よりもリスクが高いということになります。比較的リスクが高いとされる土地の価格相場は、周辺とはどの程度違うのでしょうか。また、そもそも売却は可能なのでしょうか。

この記事では、土砂災害警戒区域の土地価格相場について、指定区域の推移や売却可否を踏まえて解説します。

土砂災害警戒区域は増えている?

ここでは土砂災害警戒区域の位置づけや現状について、国土交通省が公開している「砂防:土砂災害警戒区域等の指定状」をもとに解説します。

なお、土砂災害警戒区域は、関係各機関が作成した災害リスク情報などをまとめて閲覧できる「ハザードマップポータルサイト」で調べられますので、保有している土地についてチェックしておくようにしましょう。

また、土砂災害警戒区域よりも危険な区域を土砂災害特別警戒区域といいます。土砂災害警戒区域を「イエローゾーン」、土砂災害特別警戒区域を「レッドゾーン」と呼ぶこともあります。

土砂災害警戒区域の指定推移

土砂災害警戒区域は令和3年時点で約678,000区域が指定されています。10年前の平成23年は約259,000区域と10年間で約420,000区域増加しており、年平均にすると1年で約42,000区域が増加していることになります。

おこり得る被害とは

土砂災害警戒区域でおこり得る災害には、土石流や地滑り、急傾斜の崩壊が挙げられます。
どの災害であっても家屋の損壊や人命が脅かされるといった被害が想定されます。平成30年7月に発生した豪雨の影響では、全国で119名の死者が確認され、内69名が土砂災害警戒区域内でした。

このように、土砂災害警戒区域は災害発生時には命の危険さえある区域だということがわかります。

今後指定が解除される可能性はある?

近年はゲリラ豪雨や異常気象の影響によって、思わぬ場所で災害が発生する傾向にあります。そのため、一度指定された区域は安全が確保されるような大規模工事が実施されない限り、解除されることはありません。

しかし、土砂災害警戒区域に指定される区域は山間部や過疎地域であることが多く、災害対策の予算が確保できないという背景があります。こういった背景から、一度指定された土砂災害警戒区域が解除される可能性は低いと考えられます。

不動産を売却するなら、まずは価格査定から

無料査定はこちら

土砂災害警戒区域の土地価格相場

土砂災害警戒区域に指定された土地の売却は、原則制限はありません。そのため売主は自由に価格設定ができますが、相場と同じ価格帯に設定することは難しいとされています。

また、土砂災害警戒区域から土砂災害警戒特別区域の指定区域に変更となった場合のリスクについても知っておくべきでしょう。その一方、相続時に税金が安くなるというポイントもあります。

ここでは土砂災害警戒区域の土地価格相場と相続税について解説します。

土地価格は約500~1,000万円下がる

土砂災害警戒区域では災害対策が必要です。
たとえば急傾斜面に対して擁壁(ようへき)を組んだり、家が流されないような深基礎工事が必要だったりします。これらの対策費用は約500〜1,000万円かかります。

つまり、買い手がこの費用を負担することを見込んだ価格設定にしなければ反響を獲得することが難しい土地だといえます。当然土砂災害に関するリスクやネガティブイメージも買い手は持っているため、実際の販売価格は災害対策の負担費用以上に低くなるケースもあります。

土砂災害特別警戒区域の土地価格相場はさらに下がる

土砂災害警戒区域よりも更に危険な区域だと判断された場合は、土砂災害特別警戒区域に指定されます。

土砂災害警戒区域では、建物に関する規制はありませんが、土砂災害特別警戒区域になると
開発行為(宅地にすること)や建物の構造に規制がかかります。

つまり、土砂災害特別警戒区域で家を建てることは難しく、購入希望者は少なくなります。そのため、土地価格は相場の半分以下になるケースが多くなってしまうのです。

土砂災害特別警戒区は相続税評価額が下がる

土砂災害特別警戒区域は、相続税評価額の減額が受けられます。相続税評価額が減額されることで、相続税が安く済みます。

具体的には相続課税評価額が約10%〜30%安くなります。また、土砂災害警戒区域とは知らずに相続税を納税したあとであっても、被相続人が死亡してから5年10カ月以内であれば納税した税務署に申告すれば返金が可能です。そのため、まず自身が保有している土地が土砂災害警戒区域に指定されていないか、チェックするようにしましょう。

なお、評価額の減額は土砂災害警戒区域においては対象外となるので注意してください。

不動産を売却するなら、まずは価格査定から

無料査定はこちら

土砂災害警戒区域の売却は可能?注意点とは

土砂災害警戒区域の土地であっても売却は可能です。しかし、売却できない場合は、リスクのある土地を保有し続けることになります。また、災害が起きた際に近隣住民に被害が及んだ際には責任追及される可能性もあります。

ここでは土砂災害警戒区域の売却について紹介します。

物件紹介時には告知が必要

土砂災害警戒区域の土地は、相場よりも安く、価格交渉もされやすい土地となるため、セカンドハウス用や資材置き場として購入する方は多いです。

ただし、ハザードマップによって区域指定されていることを契約前に買い手へ説明する義務があります。そのため、買い手は必ず検討段階で土砂災害警戒区域である事実を知ることになり、告知をした時点で検討をやめてしまうケースも珍しくありません。

買い手には必ず現地確認をしてもらう

土地を購入する際に買い手が遠方に住んでいれば、オンラインで重要事項説明、郵送で契約締結をすることが増えてきました。しかし、土砂災害警戒区域の土地は必ず現地確認してもらうよう、買い手に伝えましょう。

現地確認してもらう理由は、土砂災害警戒区域の土地売買は契約直前になってキャンセルとなるケースが多いからです。契約直前のキャンセルは多くの時間と労力が無駄になります。そういったことにならないよう、事前によいことも悪いことも細かく伝え、買い手が判断しやすい状況をつくりましょう。

土砂災害特別警戒区域の売却は要注意

土砂災害警戒区域の土地は原則規制がありませんが、土砂災害特別警戒区域の土地は売却に大きな制限が付加されます。

土砂災害特別警戒区域の土地は開発行為や構造の規制、建築物の移転などの規制があり、都道府県もしくは市町村の許可が必要です。そのため、買い手がイメージする建築や造成ができないことも多く、契約から許可がおりて、実際工事がスタートできるまでに数年かかることもあります。

さらには申請が途中で否決となってしまい、数年かけた準備が白紙になる可能性もあります。土砂災害特別警戒区域の土地を売買する際にはこれらすべてのリスクを説明し、買い手に理解してもらう必要があるため、注意が必要です。

土砂災害警戒区域や土砂災害特別警戒区域の売却は地元不動産会社へ相談しよう

土砂災害警戒区域の土地は保有しているだけでもリスクがあり、一旦災害が起きてしまえば売却できるチャンスはほとんどなくなってしまいます。そのため、利活用する予定がない土地であれば早期売却してしまうのが得策です。

しかし、価格設定や売却計画の立案が非常に難しい土地だといえます。早期売却がよいとはいっても、必要以上に安い価格で売却する必要性はありません。土砂災害警戒区域の土地であっても適切な価格での売却と売却計画の立案は可能であるため、まずはその地域の不動産会社に相談するようにしましょう。

名古屋市の不動産に関する
お問い合わせは
ファミリアホームサービスまで

お問い合わせはこちら