マンションを住み替えるとき、「どんな税金で確定申告が必要になるの?」「自分は申告すべき?」と迷う方は少なくありません。
住み替えでは譲渡所得税・3,000万円特別控除・住宅ローン控除などが関わり、ケースによっては確定申告が必須。知らないと控除を受け損ね、数十万円以上の差が出ることもあります。
住み替えで確定申告が必要になる税金の種類と、手続きの基本をわかりやすく解説します。
マンションの住み替えで確定申告が必要な税金の種類
マンションを住み替える際には、売却・購入それぞれに関わる税金が発生します。確定申告が必要となる主な税金について、種類ごとに整理していきましょう。
譲渡所得税
マンションを売却して利益が出た場合、譲渡所得税の申告が必要です。譲渡所得とは、売却によって得られた利益のことで、以下の計算式で算出されます(参照:国税庁)。
譲渡所得 = 譲渡価格 −(取得費 + 譲渡費用)
各項目の内容は以下のとおりです。
- ・譲渡価格:売買契約書に記載された売却金額(収入金額)
- ・取得費:購入時の物件価格+登記費用・仲介手数料・設備費・改良費など(建物部分は減価償却後の金額)
- ・譲渡費用:売却時にかかった仲介手数料、測量費、印紙代、立退料、取壊し費用など
譲渡所得が発生した場合、所得税・住民税・復興特別所得税が課税されます。ただし、居住用財産の売却で一定の条件を満たす場合、「3,000万円特別控除」や「買い替え特例」などの制度を活用することで、税負担を軽減または繰り延べできます。
減価償却
取得費のうち建物部分は、経年劣化を考慮して減価償却されます。これは税務上のルールであり、実際の価値減少とは異なるものと覚えておいてください。
鉄筋コンクリート造のマンションであれば法定耐用年数は47年として計算します。減価償却費は、「建物価格を47年で均等に割り、所有年数分を減価償却費として差し引いたもの」となります。
- ・例:建物価格2,350万円、所有期間10年の場合
- ・減価償却費:2,350万円 ×(10年 ÷ 47年)= 約500万円
- ・取得費:2,350万円 − 500万円 = 約1,850万円
上記の例のように、減価償却後の金額が譲渡所得の計算に使われる「取得費」となります。
損益通算
マンション売却で損失が出た場合、その損失を他の所得(給与所得や事業所得など)と合算して税負担を軽減できるのが「損益通算」です。
- ・損益通算できるのは居住用財産の譲渡損失に限る
- ・新居に住宅ローンを利用していることが条件
- ・損益通算後でも控除しきれない損失は「繰越控除」へ
繰越控除
損益通算しても控除しきれなかった損失は、翌年以降最大3年間にわたって繰り越して控除できます。
- ・初年度に確定申告をしておくことが必須
- ・翌年以降も継続して申告が必要
- ・控除対象は所得税・住民税の両方
新居で住宅ローン控除を受ける場合
新居で住宅ローン控除を受ける場合、「3,000万円特別控除」との併用はできません。どちらか一方を選択する必要があります。以下の比較表を参考に、どちらが有利かを判断しましょう。
3,000万円特別控除と住宅ローン控除の比較表
| 条件 | 3,000万円控除 | 住宅ローン控除 |
|---|---|---|
| 適用対象 | 譲渡所得から控除 | 所得税から控除 |
| 控除額 | 最大3,000万円 | 最大40万円/年(10年) |
| 併用可否 | 併用不可 | 併用不可 |
| 有利なケース | 売却益が大きい | 新居のローン残高が多い |
譲渡益、新居のローン残高、所得水準などを総合的に判断するため、判断に困ったら税理士など専門家に相談することをおすすめします。
印紙税
印紙税は、売買契約書を作成する際に課される税金です。契約金額に応じて収入印紙を貼付する必要があります。
- ・100万円超〜500万円以下:1,000円
- ・500万円超〜1,000万円以下:5,000円
- ・1,000万円超〜5,000万円以下:1万円
- ・5,000万円超〜1億円以下:3万円
- ・1億円超〜5億円以下:6万円
- ・5億円超〜10億円以下:16万円
契約書に印紙を貼付しなかった場合や、金額が不足していた場合には、過怠税(本来の印紙税額の3倍相当)が課されることもあるため、注意してください。
売買契約書は2通作成されることが一般的ですが、印紙税が課されるのは「原本」のみです。控えやコピーには課税されません。
契約書を電子契約で締結する場合は、印紙税が不要となるため、契約方法によっても対応が異なります。
登録免許税
登録免許税は、所有権移転登記や抵当権設定登記などを行う際に課される税金です。
所有権移転登記の税率は原則「固定資産税評価額 × 2.0%」ですが、以下のような条件を満たす場合には、軽減措置が適用され、税率が「0.3%」または「0.15%」に引き下げられます。軽減措置が適用される主な条件は以下のとおりです。
- ・自己の居住用として取得する住宅であること
- ・床面積が50㎡以上240㎡以下であること
- ・新築または取得後1年以内に登記を行うこと
- ・中古住宅の場合は、一定の耐震基準を満たしていること(証明書が必要)
例えば、2,000万円の評価額の住宅を自己居住用として購入し、上記の条件を満たす場合、登録免許税は以下のように軽減されます。
- ・軽減前:2,000万円 × 2.0% = 40万円
- ・軽減後:2,000万円 × 0.3%(または0.15%)= 6万円(または3万円)
ただし、軽減措置は自動的に適用されるわけではなく、登記申請時に必要書類を添付して申請する必要があります。
消費税
マンションの住み替えにおいて、消費税が関係するのは主に「購入時の建物部分」です。売却時については、売主が一般の個人である場合、消費税は課税されません。これは、個人による不動産売却が「事業としての資産の譲渡」に該当しないためです。
一方、購入時には売主が法人(不動産会社など)であるケースが多く、建物部分に対して消費税が課されます。土地部分は非課税ですが、建物価格に対して10%の税率が適用されます。
- ・売却時:個人が売主の場合 → 消費税は課税されない
- ・購入時:法人が売主の場合 → 建物部分に消費税が課税される
マンションを不動産会社から購入する場合、建物価格が3,000万円であれば、消費税は30万円となります。
なお、消費税は住宅ローン控除の対象になりません。購入時の総費用に影響するため、資金計画に含めておく必要があります。
不動産取得税
不動産取得税は、物件購入後に都道府県から課される地方税です。原則として、土地・建物の固定資産税評価額に対して土地は3%、建物は4%の税率で課税されます。
ただし、住宅用の建物には軽減措置があり、評価額から一定額が控除のうえで課税される決まりです。評価額が1,500万円の建物の場合、軽減後の取得税は約6万円程度になります。
納税通知書は購入後数カ月以内に届くため、あらかじめ資金計画に含めておくことが大切です。
固定資産税・都市計画税
固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日時点の所有者に課される税金です。
固定資産税は原則1.4%、都市計画税は0.3%の税率が適用されます。評価額が2,000万円のマンションの場合、年間の固定資産税は約28万円、都市計画税は約6万円ほどです。
住み替えによって物件を取得した場合、翌年以降の納税義務が発生するため、購入後の維持費として計上しておきましょう。
マンションの住み替え時にすべき確定申告の方法

マンションの住み替えに伴って発生する税金のうち、確定申告が必要なものについては、申告のタイミングや方法を正しく理解しておくことが重要です。
ここでは、譲渡所得税を中心に住み替え時に行うべき確定申告の流れと注意点を整理していきましょう。
必要書類
確定申告では、申告内容に応じた書類をそろえる必要があります。譲渡所得税・損益通算・住宅ローン控除など、それぞれで必要となる書類は異なりますが、以下は住み替えに関する申告で共通して求められる主な書類です。
- ・売買契約書(売却・購入)
- ・登記簿謄本
- ・仲介手数料の領収書
- ・減価償却計算用の建物取得費明細
- ・住民票(転居先)
- ・確定申告書(B様式)
- ・譲渡所得の内訳書
- ・特例適用申請書(活用する場合)
申告内容によっては、特例適用に関する明細書や添付書類台紙なども必要になります。税務署の窓口や国税庁のWebサイトで最新の様式を確認しておきましょう。
申告時期
マンションの住み替えに伴う確定申告は、原則として売却・購入の翌年に行います。申告期間は毎年決まっており、以下のとおりです。
- ・申告期間:毎年2月16日〜3月15日(※土日祝日の関係で多少前後する場合あり)
- ・対象期間:前年1月1日〜12月31日までに発生した所得・控除
例えば、2025年中にマンションを売却・購入した場合、2026年の2月16日から3月15日までの間に申告を行う必要があります。住宅ローン控除や損益通算・繰越控除などの制度を利用する場合も、初年度は必ずこの期間内に申告を行う必要があるので注意してください。
申告を忘れると控除が受けられなくなったり、損失の繰越ができなくなったりするため、スケジュール管理は非常に重要です。
なお、e-Tax(電子申告)を利用する場合は、事前準備やマイナンバーカードの取得が必要となるため、早めの準備がおすすめです。
申告時期に遅れた場合のリスク
確定申告の期限を過ぎてしまった場合、制度上の控除が受けられなくなり、ペナルティが課されるおそれがあります。マンションの住み替えに関する申告では、特例や控除の適用が期限厳守であることが多いため、遅延による影響は大きいです。
以下が主なリスクです。
- ・譲渡所得税の特例(3,000万円控除など)が適用できなくなる
- ・損益通算・繰越控除が初年度に申告されていないと無効になる
- ・住宅ローン控除の初年度申告を逃すと、控除が受けられない
- ・延滞税や加算税が課される可能性がある
- ・税務署からの問い合わせや調査対象になることがある
とくに、損益通算や繰越控除は「初年度に申告していること」が条件となっているため、申告漏れがあると翌年以降の控除が一切受けられなくなります。
また、住宅ローン控除も初年度に申告していないと、年末調整での控除ができず、結果的に数十万円単位の損失となってしまうことも。ただし、期限を過ぎてしまった場合でも、「期限後申告」として受理してもらえる可能性もあるので、すぐに税務署に相談しましょう。
特例の適用可否や加算税の有無はケースによって異なるため、早めの対応が重要です。
申告の流れ
マンションの住み替えに伴う確定申告は、以下の流れですすめると、制度の適用漏れや書類不備を防ぎやすいです。
- 1.譲渡所得の計算
- 2.利用する特例を選択する
- 3.必要書類の準備
- 4.申告書の作成
- 5.提出・納税
以下では、譲渡益が出た場合・損失が出た場合・新居で住宅ローン控除を受ける場合の3つのケースに分けて、申告の流れを詳しく解説します。
譲渡益が出た場合
マンション売却によって譲渡益が出た場合は、譲渡所得税の申告が必要です。譲渡所得の計算を行い、課税対象となる金額を確定したうえで、特例の適用可否を判断しなくてはなりません。譲渡益が出た場合の申告ポイントは、以下のとおりです。
- ・譲渡所得の計算には、取得費・譲渡費用・減価償却の考慮が必要
- ・居住用財産の売却であれば「3,000万円特別控除」などの特例を使える可能性あり
- ・特例を使う場合は、住民票や明細書などの添付が必要
- ・申告書は「分離課税用」の様式を使用
- ・納税額が確定したら、申告期間内に納付する
譲渡益が大きい場合は、特例の有無によって納税額が数百万円単位で変わることもあるため、事前の試算と制度理解が重要です。
損失が出てしまった場合
マンション売却で損失が出た場合は、損益通算や繰越控除を活用することで、他の所得との相殺や翌年以降の控除が可能になります。損失が出た場合の申告ポイントは以下のとおりです。
- ・損益通算は、居住用財産の譲渡損失に限り適用可能
- ・新居に住宅ローンを利用していることが条件
- ・損益通算後に控除しきれない損失は、最大3年間繰り越し可能
- ・初年度に申告していないと、繰越控除は無効になる
- ・申告書には損失額の根拠資料と住宅ローン契約書の添付が必要
損益通算や繰越控除は、税負担を大きく軽減できる制度ですが、申告のタイミングと書類の整備が非常に重要です。
新居で住宅ローン控除を受ける場合
新居を購入し、住宅ローンを利用している場合は、住宅ローン控除の申告を行うことで所得税の軽減が可能です。初年度は確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で対応できます。
住宅ローン控除の申告ポイントは以下のとおりです。
- ・初年度は確定申告が必須(年末調整では対応不可)
- ・年末残高証明書・登記事項証明書・住民票などの添付が必要
- ・控除額は年末残高の1%(最大40万円/年)を所得税から控除
- ・「3,000万円特別控除」との併用は不可。どちらか一方を選択する
- ・控除期間は原則10年(条件により13年)
譲渡益が出ている場合は、住宅ローン控除よりも「3,000万円特別控除」のほうが有利になるケースもあるため、事前に比較して選択することが重要です。
お得な特例の判断に悩んだ時の相談先
マンションの住み替えに伴う確定申告では、「3,000万円特別控除」「住宅ローン控除」「損益通算・繰越控除」など、複数の特例が関係します。これらの特例は併用できないものもあり、どれを選ぶべきか迷うケースも少なくないでしょう。
例えば、譲渡益が出ている場合に「3,000万円控除」と「住宅ローン控除」のどちらが有利かは、売却益・新居のローン残高・所得水準などによって変わります。また、損失が出た場合でも、住宅ローンの有無や居住要件によって損益通算の可否が分かれます。
こうした判断に迷ったときは、以下のような専門機関や窓口に相談するのが確実です。
- ・税務署の相談窓口(無料・予約制のケースあり)
- ・税理士(有料だが個別事情に即した具体的なアドバイスが可能)
- ・不動産会社の提携税理士やFP(売買契約時に紹介されることも)
- ・市区町村の無料税務相談(確定申告時期に実施されることが多い)
とくに、複数の特例が絡むケースや、売却と購入のタイミングが年をまたぐようなケースでは、自己判断が難しくなります。制度の適用条件や控除額の比較を正確に行うためにも、早めに専門家に相談し、最適な申告方針を立てておくことが重要です。
確定申告書(B様式)
マンションの住み替えに伴う確定申告では、原則として「確定申告書B様式」(給与や年金収入のほかに物件売却で収入がある場合などに使用する)で申告しなくてはなりません。確定申告書B様式は、以下のような構成になっています。
- ・第一表:所得の合計・税額計算・納付額の記載
- ・第二表:所得の内訳・控除の詳細・源泉徴収額などの記載
- ・第三表:分離課税用(譲渡所得などを記載)
- ・添付書類台紙:契約書・証明書などを貼付する台紙
譲渡所得がある場合は「第三表(分離課税用)」に詳細を記載し、住宅ローン控除を受ける場合は「第二表」に控除額を記載します。また、損益通算や繰越控除を行う場合は、損失額の記載と根拠資料の添付が必要です。
申告書は国税庁のWebサイトからダウンロードできるほか、e-Taxを利用すればオンラインで作成・提出もできます。
手書きで作成する場合は、記載ミスや計算ミスに注意しましょう。不安がある場合は、提出前に税務署や税理士に確認してもらうと安心です。
申告のポイント
マンションの住み替えに関する確定申告では、制度の複雑さや書類の多さから、申告ミスや控除漏れが発生しやすくなります。以下のポイントを押さえておくと、正確でスムーズに申告を終えられます。
- ・申告内容を分けて整理する:売却・購入それぞれの税制を混同しないよう、譲渡所得・住宅ローン控除・損益通算などを個別に把握する
- ・特例の併用可否を確認する:「3,000万円特別控除」と「住宅ローン控除」のように併用できない特例を選択していないか確認する
- ・初年度申告の重要性:損益通算・繰越控除・住宅ローン控除は初年度に申告しないと適用されない
- ・書類の保存と整理:契約書・領収書・証明書などは申告後も最低5年間は保管しておくとよい
- ・e-Taxの活用:電子申告なら添付書類の省略や還付の早期化が可能
e-Tax(電子申告)を活用する場合、マイナンバーの記載が基本ですが、ない場合は事前に税務署に出向き暗証番号の取得が必須です。申告方法によっては事前準備が必要になることを踏まえ、予定を立てておくようにしましょう。
また、譲渡益が出た場合は「どの特例を使うか」で納税額が大きく変わるため、事前の試算と制度理解が重要です。
損失が出ている場合でも、住宅ローンの有無や居住要件によって控除の可否が分かれるため、制度の適用条件を正確に把握しておく必要があります。



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