実家を処分するときの事前準備と大まかな流れ

売りに出されている実家

実家を処分する際、家財の取り扱いや手続きなどでトラブルが発生する場合があります。特に相続人が複数いる場合は、手続きを進めるのに手間や時間もかかるため、事前準備が必要不可欠です。

押さえておくべき準備のポイントと、実家を売却するときの大まかな流れについて解説します。

実家の処分に必要な事前準備

まず、実家を処分する前に、遺言書の有無や相続人の範囲、実家を誰が取得するかを確認しておくとよいでしょう。

遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、その内容に基づいて相続登記を進めていくことになります。

遺言書の確認

親や親族が遺言書を残していた場合は、その内容を確認するところからはじめましょう。遺言書には主に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があります。

公正証書遺言は、2人以上の証人(立会人)のもと、法律の専門家である公証人が遺言書を作成し、遺言書は公証役場に保管されます。

一方、自筆証書遺言は自身で作成するもので、原則として家庭裁判所での検認(家庭裁判所が開封し、内容を確認する)手続きが必要です。法務省が運営する「遺言書保管制度」を利用して預けていた場合は、検認が不要となります。

実家を相続後に処分する場合は、早い段階で遺言書の所在を確認し、弁護士や司法書士に相談するとよいでしょう。

遺産分割協議

遺言書がない場合、または遺言書に実家の処分に関する記載のない場合は、相続人全員で実家の相続先を話し合う「遺産分割協議」を行います。

遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ成立しません。協議内容をまとめた遺産分割協議書に、相続人全員が署名し、実印で押印します。話し合いが長引く場合や意見の対立が解消できない場合は、家庭裁判所の調停手続きを利用する方法もあります。

相続登記(名義変更)

実家を売却して処分するには、不動産の名義を相続人へ変更する「相続登記」を先に済ませる必要があります。

2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続で不動産を取得した日から3年以内に手続きをしないと、10万円以下の過料の対象となります。司法書士に依頼する場合、内容の複雑さによって異なりますが費用は5〜15万円程度が目安です。

参考:法務局「相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ

実家を売却するときの流れ

実家の処分について話し合う男女

実家を売却する場合のおおまかな流れをまとめました。売り出しから引き渡しまでは一般的に3〜6カ月程度かかるため、スケジュールには余裕をもってのぞむのがおすすめです。

1.不動産会社に査定を依頼する
複数の不動産会社に査定を依頼して、市場価格の目安を把握します。不動産会社によって査定方法が異なるため金額には差があります。

2.媒介契約を締結する
査定結果を比較して依頼先を決め、媒介契約を結びます。媒介契約には、「専任媒介」「専属専任媒介」「一般媒介」の3種類があり、それぞれ活動内容や報告義務に違いがあります。

3.売却活動を開始する
不動産会社がインターネット掲載・チラシ配布・内覧対応などを通じて買い手を探します。売主は内覧の準備や必要書類の準備を進めておくとよいでしょう。

4.売買契約を締結する
買い手が決まると価格や引き渡し条件を調整し、売買契約を結びます。この際に手付金を受け取るのが一般的です。

5.決済・引き渡しを行う
残代金を受け取り、鍵を引き渡した時点で売却は完了です。住み替えなどで新居を購入している場合は、同時に所有権移転登記の手続きも行います。

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実家の処分方法とそれぞれのメリット・デメリット

実家の処分方法は、物件の状態や立地条件、売却期間の長さによって最適な方法が変わります。それぞれの特徴を理解しておくと、状況に応じた判断がしやすくなるでしょう。

仲介売却

仲介での売却は、不動産会社を通じて一般の買い手を探す、比較的オーソドックスな売却方法です。買い手は個人であることが多く、住宅ローンを利用して購入されるケースがほとんどです。

メリット:市場価格に近い価格での売却が期待できます。複数の不動産会社の査定結果を比較することで、より有利な条件での売却につながるでしょう。条件に合う購入希望者が見つかれば、希望に近い価格で売却できるのも魅力です。

デメリット:買い手が見つかるまでに時間がかかることがある点がネックです。売り出しから成約までは3〜6カ月程度が目安ですが、立地や物件の状態によっては1年以上かかることもあります。売却活動の間も実家の固定資産税や建物管理の支払いは続くため、早期売却を意識した価格設定も大切です。

実家を買い取ってもらう

買取は、不動産会社(買取事業者)が直接物件を購入する方法です。買い取った事業者は、リフォームや建て替えをして再販することを目的としています。

メリット:完了までのスピードが最大の利点です。買取は早ければ数週間で手続きが完了し、老朽化した建物や立地の悪い物件でも対応してもらえるケースがあります。また、仲介手数料がかからない点もメリットに挙げられます。

デメリット:買取価格は、仲介で売却した場合の70〜80%程度になるのが一般的です。特に急ぎでなければ、まず仲介で売却するほうが手取り額は増えやすいでしょう。買取に対応している業者はあまり多くなく、すべての物件が対象になるわけではないので、実家が対象外となることもあります。

実家を賃貸に出す

実家を取り壊さずそのまま賃貸物件として活用する方法です。解体費用がかからず、物件の立地や建物の状態が良ければ収入を得ることもできるでしょう。

メリット:入居者が見つかれば家賃収入が得られます。実家を処分する必要がなく、状況を見ながら将来的に売却へ切り替えることもできます。相続人が複数いる場合は、管理方法や収益分配のルールを事前に決めておくことが大切です。

デメリット:空室が続くと月の収入はゼロになります。入居者対応や設備の修繕など賃貸管理には手間もかかり、管理会社に委託すると別途費用が発生します。ただし、建物が老朽化している場合は、賃貸に出す前にリフォームが必要になることもあり、初期費用がかさむことも考えられます。

実家を空き家バンクに登録する

空き家バンクは、地方自治体が運営する空き家の売買・賃貸マッチングサービスです。実家の処分方法として、近年活用されるケースが増えています。

メリット:通常の不動産会社では需要が少ない田舎の物件でも、移住希望者や古民家を探している人とマッチングできる可能性があります。登録料・利用料が無料の自治体が多く、補助金や改修支援を導入しているところもあります。

デメリット:登録しても必ずしも早期成約につながるわけではなく、マッチングするまで時間がかかることもあります。自治体によってサービスの内容や対象エリアが異なるため、事前に確認が必要です。売買条件や物件の状態は正確に記載し、必要に応じて不動産会社のサポートを併用するとよいでしょう。

実家を解体して更地にする

建物を取り壊して更地にしてから売却する方法もあります。特に築年数が古く老朽化が進んでいる物件では、買い手がつきにくいため解体することで売れやすくなるケースがあります。

メリット:更地にすることで買い手が自由に建物を建てられるため、購入を検討する人の幅が広がります。また古家がないことで、建物の老朽化を理由とした値引き交渉を受けにくくなる面もあります。

デメリット:家の広さや構造によっては解体費用が高額になります。木造住宅の場合、1坪あたり3万〜5万円程度が目安です。また、更地になると固定資産税の住宅用地特例(最大6分の1に軽減)から外れ、税額が上がる点にも注意が必要です。

相続放棄または相続土地国庫帰属制度を検討する

実家だけでなく預貯金や借金を含めた財産も相続したくない場合は、相続放棄を検討するとよいでしょう。さらに、実家の処分では相続土地国庫帰属制度を利用することもできます。一定の条件を満たせば、相続した土地でも国に引き取ってもらうことが可能です。

メリット:相続放棄ではすべての資産を引き継がないので、相続によるトラブルに巻き込まれるのを防げます。国庫帰属制度では実家の土地を手放すことで、遠方に住んでいて草刈りや固定資産税の負担を軽減できるでしょう。

デメリット:相続放棄は不動産だけでなく、預金などすべての相続財産を手放すことになり、撤回することもできません。国庫帰属制度には厳正な審査があり、実家の建物が残っている場合は、解体する必要があります。

負担金として費用もかかるため、事前に法務省のウェブサイトで確認しておくとよいでしょう。

参考:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要

実家の処分で後悔しないための注意点

実家の処分は家族や親族など多くの人が関わるため、後からトラブルに発展することがあります。とりわけ思い出深い実家ですので、事前の確認不足が大きな損失や人間関係のひずみにつながることがあります。

実家の処分で特に気をつけたいポイントについて詳しく見ていきましょう。

処分について家族や親族の同意を得る

実家を誰が相続するか決まっていない段階では、相続人全員の合意なしに売却などの処分はできません。一人でも反対する相続人がいれば、手続きはそこで止まってしまいます。

早い段階で話し合いの場を設け、方向性を固めておくことが重要です。感情的な対立により解消が難しい場合は、弁護士や司法書士などの専門家を通して協議することが解決への近道になります。

遺品や家財を慌てて処分しない

実家には、思い出の品や親の家財が残っているケースが多くあります。相続手続きが完了する前に処分すると、重要な書類や通帳、有価証券などを誤って廃棄してしまうことがあるため注意が必要です。

実家の処分を急いでいる場合でも、遺品や家財の整理は慎重に進めましょう。貴重品や書類はひとまとめにして保管しておき、明らかに不要なものから少しずつ片づけていくとよいでしょう。

遺品整理業者を利用する際は、比較・検討するために複数の業者から見積もりを取るようにするのが確実です。業者の中には、無許可で廃棄物を処理する悪質な事業者もいます。

そのため、一般廃棄物処理業の許可を取得しているか、または許可業者と提携して適正に処理しているか事前に確認しておくことをおすすめします。

実家の境界を確認する

実家を売却する場合、隣家との境界が確定していなくても、現在の状態のまま売買することは可能です(現況有姿売買)。ただし、買い手が住宅ローンを利用する場合や後のトラブルを避けるために、不動産取引では確定測量を求められることがあります。

境界が不明確なまま売り出すと、売却後に隣人との境界トラブルに発展したり、購入希望者が不安を感じたりして、買い手が見つかりにくくなってしまいます。

境界を明確にするには、土地家屋調査士に「境界確定測量」を依頼します。費用は土地の広さや隣接地の数によって異なりますが、30万〜80万円程度が目安です。既存の測量図がある場合も、現況と一致しているか改めて確認しておくと安心です。

税金や費用について事前に把握する

実家の処分では、基本的に税金や諸費用が発生します。

売却する場合の主な諸経費として、仲介手数料・相続登記費用・測量費用のほか、解体費用やごみ処理費用などがあります。実家のローン残債がある場合は、抵当権抹消の手続き費用も別途かかります。

また、実家の売却で利益が出ると譲渡所得税がかかりますが、一定の条件を満たせば最大3,000万円の控除制度の利用が可能です。なお、不動産を取得した相続人が3人以上いる場合は、控除額が最大2,000万円となるため注意が必要です。

処分方法によって費用の内訳が変わるため、費用や特例制度を事前に把握しておくと、売却後の資金計画が立てやすくなります。実家を放置していると維持費や固定資産税の負担が続くだけでなく、「特定空家」に認定された場合は行政から勧告・命令が出されるおそれもあります。

処分方法によっては多くの専門知識を必要とするため、不動産会社のほか、弁護士や司法書士、税理士などに相談し、最適な方法で実家を処分するのが望ましいでしょう。

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