老後はライフスタイルや健康状態、家計が変化しやすい時期です。状況の変化に合わせて、「今の家は暮らしに合っているか」を見直すには、まさに最適なタイミングといえるでしょう。
老後に住み替えを考える代表的な理由3つと、その利点・欠点、さらに失敗を避けるための注意点を解説します。
データで読み解く!老後の住み替え理由3選
内閣府の「令和6年版高齢社会白書」によると、住み替えの意向がある(または将来的に検討したい)65歳以上の高齢者は、全体の約3割に達しています。
住み替えの意向の有無

画像引用:内閣府「令和6年版高齢社会白書」
以下では、内閣府のアンケート結果をもとに老後の住み替え理由ランキングを紹介します。
1位:健康・体力面で不安を感じるようになったから
高齢者が住み替えを検討する理由として最も多かったのが、「健康・体力面で不安を感じるようになったから」というものです。
年齢を重ねると、ちょっとした段差でも転倒のリスクが高まったり、通院が負担になったりと、体力や健康面での不安が出てきます。
そのため、見守りサービスがある住居や、介護・医療施設が近いエリアに住み替えを検討するケースが多いのです。
2位:自身の住宅が住みづらいと感じるようになったから
次いで多かったのが、「自身の住宅が住みづらいと感じるようになったから」という理由です。
特に一戸建てに住んでいる人は、「子どもの独立で部屋を持て余す」「庭の手入れが重荷になる」など、問題が生じることがあります。
また、広い家ほどバリアフリー化には手間も費用もかかるため、より快適で管理しやすい住まいへの住み替えを検討する人も少なくありません。
3位:自然豊かな環境で暮らしたいと思ったから
「自然豊かな環境で暮らしたい」という希望も、住み替えを検討する理由のひとつです。
現役時代は駅へのアクセスや通勤の便利さが重要視されていたものの、リタイア後は都会特有の騒がしさにストレスを感じるようになり、「第二の人生は静かで緑あふれる場所で過ごしたい」と考える人も増えています。
このほかにも、「買い物が不便になったから」(4位)、「交通の便が悪くなったから」(5位)、「生活費を抑えたいから」(6位)といった理由が続いています。住み替えを検討するうえで多くの高齢者が生活環境の利便性や、経済的理由を重視していることがわかります。
特に高齢になると、車の運転をやめる人も多く、日常の移動や買い物が不便になることから、交通の便のよいエリアに住み替えを検討する人も少なくありません。
また、年金生活になることから、生活費を見直す一環として、住み替えを考えるケースも見られます。
老後も同じ家に住み続けるメリットとデメリット

65歳以上の高齢者の約7割が「今後も住み替えの意向はない」と回答しています。住み慣れた家には安心感がありますが、その一方で維持管理や費用の面で負担となることも少なくありません。
老後も同じ家に住み続ける場合のメリットとデメリットを整理すると、以下のようになります。
メリット:住み慣れた家・土地に住み続けられる
長年住み慣れた家であれば、家の中の動線や間取りを熟知しているため、生活に無駄なストレスがかかりません。また、使い慣れた家具や設備をそのまま使えることも、日々の快適さにつながります。
さらに、行きつけの病院やお店があることも、生活の中での安心材料となります。顔なじみの人が多い地域で暮らすことで、万が一のときにも助けを求めやすく、孤立を防ぎやすい点もメリットです。
メリット:家族が集まりやすい
家族が集まりやすいという点も、今の家に住み続ける魅力のひとつです。子どもが巣立ったあとの広い家は、普段は持て余すかもしれませんが、お盆やお正月などには子どもや孫たちが帰省すれば、にぎやかになります。
長年暮らしてきた住まいに集まることで思い出話もはずみ、楽しい時間を過ごせるでしょう。
一方で、リタイア後にコンパクトな住まいに引っ越したことで、帰省した家族を迎えるスペースがなくなってしまったという声もあります。このように、家族との関係性やライフスタイルによっては、元の家に住むほうが良いケースもあります。
デメリット:維持管理が難しい
元の家に住み続けるうえでの大きなデメリットは、家の維持管理が難しくなることです。掃除や電球の交換、庭の手入れなど、日常的な維持作業には時間と体力が必要で、高齢になるほど大変でしょう。
ライフスタイルに合わない広すぎる家では、特に負担が大きくなります。
また、家具の移動や庭木の剪定といった作業は、高齢者にとって転倒や、ぎっくり腰などのリスクが伴う危険な作業になりがちです。そうした維持管理の難しさや危険性から、安心できたはずの家に、次第にストレスや不安を感じるようになる人も少なくありません。
デメリット:費用の負担が大きい
元の家に住み続けることには、費用面での負担が大きくなるというデメリットもあります。家が古くなるにつれ、屋根の修繕や配管の交換など、大規模なメンテナンスが必要となり、場合によっては数百万円単位の出費が発生することも珍しくありません。
特に年金で生活している高齢者にとっては、こうした高額支出が家計を圧迫し、生活自体が不安定になるリスクもあります。
老後に住み替えるメリットとデメリット
老後に思い切って住み替える人もいます。しかし、新しい環境での暮らしには大きな可能性がある反面、現実的な負担やリスクも伴います。
メリット:ライフスタイルに合った家や土地に住める
老後に住み替える最大のメリットは、自身のライフスタイルや加齢による変化に応じた住環境を選択できる点です。
例えば、一戸建てからマンションへ住み替えることで、庭の手入れなどから解放され、楽になったという人も多いでしょう。
また、車を手放すタイミングで、公共交通機関が充実した地域へ移り住み、通院や買い物などの利便性が向上したという声も聞かれます。
メリット:住み替えローンを利用できる
住み替えを検討する際に、まず課題となるのが費用面の問題です。特に現在の住宅ローンが残っている場合、住居を売却する際に一括返済が求められるため、新居購入の資金調達が難しくなるケースもあります。
しかし、住み替えローンを利用すれば、残債がある状態でも新居への住み替えを進められます。旧居の住宅ローン残債と新居の購入資金を一括して借り入れられるためです。
ところが、通常の住宅ローンと比較して融資審査が厳しくなる傾向にあります。住み替えローンを利用する場合は、与信力の高い現役世代のうちに計画を進めておくとよいでしょう。
デメリット:引っ越しのストレスがかかる
高齢になってからの住み替えにおける最大のデメリットは、引っ越しによる心理的・身体的なストレスです。住環境の変化に加え、近隣との人間関係を失うことは、人によっては大きな不安要素となります。
かかりつけ医や、行きつけのスーパーも変わることになるため、変化を前向きに受け入れることが大切です。
デメリット:費用がかかり、審査のハードルも高い
新居を購入する場合は、「買い先行」と「売り先行」から選ぶのが一般的です。
買い先行は旧居を売却する前に新居を購入するため、一時的にダブルローンとなるリスクがあります。
一方、売り先行は旧居を売却してから新居を探すため、仮住まいが必要になるケースが多く、引っ越し回数の増加によって費用や労力の負担が大きくなります。
さらに、賃貸への住み替えを希望する場合でも、高齢者は入居審査に通りにくいことがあり、希望する物件に住めない場合があります。
老後の住み替えで失敗しないための注意点
老後の住み替えは利便性・快適性が上がる可能性がある反面、現実的なリスクが伴います。老後の住み替えを成功させるためには、自身のライフスタイルや予算に合わせて、綿密な計画を立てることが重要です。
特に注意すべき点は以下の3つです。
- ・現役時代から計画しておく
- ・自分のライフスタイルに合った新居を選ぶ
- ・実績のある不動産会社に相談する
それぞれのポイントについて、詳しくご紹介します。
現役時代から計画しておく
経済面でも体力面でも、住み替えは現役世代のうちに進めた方が有利です。経済的には、給与収入があるため新居の購入やローン利用の条件が良くなります。
また、体力があるうちに新居探しや引っ越しを行うことで、心身への負担を軽減できます。なかにはリタイア後に郊外へ移住するなど、住み替えの時期に制約がある場合もありますが、それでも早めに検討しておくことは重要です。
予算の確保やスケジュールの目安を決めておけば、リタイア後の住み替えに伴う手間や不安を軽減できるでしょう。
自分のライフスタイルに合った新居を選ぶ
老後に住み替えをする際は、新居が自身のライフスタイルに合っているかを事前にしっかり確認することが重要です。
主なチェックポイントは以下のとおりです。
- ・住宅の設備や間取り
- ・住宅維持にかかるコスト
- ・建物の性能や構造
- ・周辺環境(医療機関、商業施設、公共交通機関など)
- ・エリアの雰囲気や地域コミュニティとの相性
上記の点において、自身の好みや希望に加え、高齢になっても安全で快適に暮らせるかを見極めましょう。
こうした確認を怠り、イメージや憧れだけで住まいを決めてしまうと、次のような後悔につながってしまうかもしれません。
- ・閑静な環境に惹かれて引っ越したが、近隣に買い物施設がなく不便だった
- ・田舎暮らしに憧れて移住したが、地域の人間関係が閉鎖的でなじめなかった
- ・マンションに住み替えたものの、予想以上に管理費が高額だった
後悔しない新居選びのためには、理想だけでなく現実を見据えた判断が欠かせません。
自分がどのような生活を送りたいのかを明確にし、体力や予算の制約も踏まえて、慎重に選びましょう。
実績のある不動産会社に相談する
新居に住み替える際には、旧居を売却するのが一般的です。売却益を新居の購入費用や生活資金に充てることで、生活の足しにできます。
しかし、高齢になってからの住居売却は容易ではありません。建物が築古で購入希望者が現れにくいことに加え、売却には多くの手続きが伴い、時間や労力の負担が大きくなるためです。
そこで重要となるのが不動産会社の選定です。築古住宅の売却実績がある会社を選べば、より高値で、かつスムーズに売却できる可能性が高まります。
さらに、売却活動や住み替えローンの活用、売買契約の進め方などについても適切な助言を受けられるため、不安や手間を軽減できる点も大きなメリットです。
売却活動を成功させるために、実績と信頼性のある不動産会社を選びましょう。



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