老後の暮らしを見据えた住まいの選択に悩む方は少なくありません。
バリアフリーや維持費、利便性など、考慮すべきポイントは多岐にわたります。住み替えか建て替えるか。それぞれの選択肢のメリット・デメリットを知り、後悔のない決断をするためのコツを解説します。
老後に向け住み替えるメリットとデメリット
長年住み慣れた家でも、老後の生活には新たな課題が出てくることがあります。段差や階段の多い家では移動が大変になったり、買い物や病院へのアクセスが不便になったりすることもあるでしょう。
住み替えることでより安心して快適な暮らしをおくることも可能です。住み替えする場合のメリットとデメリットから見ていきましょう。
メリット
住み替えするメリットとして大きなものは、以下のように「最適な住環境を整えられる」ことにあります。
- ・自分のライフスタイルに合った住環境を選べる
- ・バリアフリー対応の住宅を選び、安全性を高められる
- ・商業施設や病院が近い場所を選べば、生活しやすくなる
自分のライフスタイルに合った住環境を選べる
新しい家を選ぶことで、現在のライフスタイルや将来の健康状態に合わせた住環境を整えられます。たとえば、子どもが独立しても家が広いままでは、掃除の負担はさほど変わらないでしょう。
しかし、現状住まう人数に合わせた間取りの家に住めれば、掃除の負担も軽く済み、日常生活も快適になります。
バリアフリー対応の住宅を選び、安全性を高められる
段差や階段が日常生活上不便に感じられる場合、住み替え先としてバリアフリー住宅を選ぶこともできます。リフォームで全面的なバリアフリーを実現するには費用がかさみますが、希望に合った物件に引っ越すだけで安全な住まいに住み替えできます。
商業施設や病院が近い場所を選べば、生活しやすくなる
駅やスーパーマーケット、病院などが近いエリアに住み替えれば、日々の生活がより便利になります。厚生労働省の調べでも、高齢になるほど通院頻度が上昇しがちであることがデータとして示されています。
特に「月に2,3日程度」以上の頻度で通院する例が目立ってくるのが、75歳以上の後期高齢者世帯です。
(参考:内閣府「6 健康・福祉に関する事項」)
通院だけでなく、運転免許の返納を考えると、できれば徒歩10分圏内でスーパーマーケットなどもあれば、日常的な不便を感じにくくなるでしょう。
デメリット
住み替えする場合のデメリットとしては、「新しい住環境への適応と費用面の問題」があるでしょう。
- ・新しい環境に慣れるまで時間がかかる
- ・住み替えに伴う費用が発生し、資金計画が必要
- ・長年住んだ家を手放すことに寂しさを感じることも
新しい環境に慣れるまで時間がかかる
長年住み慣れた環境を離れることがストレスに感じるケースもあります。新しい場所での生活になじむまで、時間がかかることがあるかもしれません。
また、現住居周辺地域で近隣住民と密な関係を構築できていた場合には、よりデメリットとして感じることもあるでしょう。
住み替えに伴う費用が発生し、資金計画が必要
住み替えには、住宅の購入費用や引っ越し費用がかかります。現住居で不要になった大型インテリアなどの廃棄物処分費用などがかかるケースもあります。
資金計画を事前にしっかり立てることが大切です。
老後の住み替えにかかる費用についてはこちらで詳しく紹介しています。
関連記事:老後の住み替え資金はどのくらい必要?調達方法についても解説
長年住んだ家を手放すことに寂しさを感じることも
思い出の詰まった家を手放すことに対して、感情的な抵抗を感じる方も少なくありません。
なかには、愛着が強すぎるあまり、新しい環境に適応することに大きなストレスを感じるあまり、外出頻度が減ってしまうケースもあります。
老後に向け家を建て替えるメリットとデメリット

長年住み慣れた家でも、老後の生活に合わせた改修が必要になることがあります。今の家に愛着があり、住み続けたいと考えている場合は、建て替えを検討するのもひとつの方法です。
ここでは、建て替えのメリットとデメリットについて見ていきましょう。
メリット
建て替えのメリットとしては、「今の環境を維持しながら快適な住まいを実現できる」点が挙げられます。
- ・住み慣れた地域で生活を続けられる
- ・最新の耐震・断熱性能を備えた住宅にできる
- ・自分の希望に合わせた間取りを実現できる
住み慣れた地域で生活を続けられる
新しい場所に引っ越さずに済むため、長年の近所付き合いやなじみのある環境を維持できます。特に、高齢になってからの人間関係の変化はストレスにつながることもあり、今の地域での暮らしを続けたいと考える方には大きなメリットです。
最新の耐震・断熱性能を備えた住宅にできる
古い住宅は耐震性が低く、断熱性能も不十分な場合が多いため、建て替えによってこれらの性能を向上させられます。たとえば、現行の耐震基準を満たした設計にすることで、地震に対する安心感が増します。
また、断熱性能を向上させることで、冬は暖かく夏は涼しい快適な住まいにできるでしょう。
建て替えで住宅性能が向上すれば、生活にかかる光熱費も削減できるため毎月の出費を抑える効果もあります。
冬は暖かく、夏は涼しい家についてはこちらで詳しく紹介しています。
関連記事:冬は暖かく、夏は涼しいは家とはどんな家?家選びのポイントや工夫を解説
自分の希望に合わせた間取りを実現できる
現在の生活スタイルに合った間取りに変更することで、より快適な暮らしが可能になります。
たとえば、車椅子を使用する可能性がある場合は、広めの廊下や玄関スペースを確保もできます。老後の生活を見据えた設計を取り入れることで、将来的な不安を軽減できるでしょう。
デメリット
建て替えにはメリットがある一方で、「コストと時間がかかる」「仮住まいが必要になる」といったデメリットもあります。
- ・建築費用が高額になる可能性がある
- ・工事期間中は仮住まいが必要
- ・固定資産税が上がることがある
建築費用が高額になる可能性がある
建て替えには、解体費用・新築費用・設計費用などのコストがかかります。特に、希望する設備やデザインによっては新築費用が大幅に膨らむ可能性があるため、事前に資金計画をしっかり立てることが重要です。
工事しやすい立地かどうか、また構造や広さによって、解体費用の相場は上下します。一般的に木造建築の場合、坪単価約5万7,000円が必要ですので、30坪であれば約171万円は見込んでおくとよいでしょう。
工事期間中は仮住まいが必要
建て替える場合は工事完了までの期間、一時的に別の場所で暮らす必要があります。仮住まいとする住居にかかる手数料や敷金・礼金のほか、引っ越し費用も発生することも考慮して資金計画を立てましょう。
固定資産税が上がることがある
新しい住宅の評価額によっては、固定資産税が上がる可能性があります。特に、高性能な設備や広い敷地を持つ住宅を建てる場合は、維持費も含めた長期的なコストを確認しておくことが大切です。
建て替えか住み替えか、老後の住まいで失敗しないコツ
老後の暮らしがより快適なものになるよう、以下のポイントを踏まえて住み替えか建て替えか判断しましょう。
- ・バリアフリー設計で安全性を確保する
- ・生活利便性の高い立地を選ぶ
- ・経済的な負担を抑える計画を立てる
- ・不動産会社に相談する
バリアフリー設計で安全性を確保する
高齢になると転倒のリスクが高まります。段差をなくし、手すりを設置するなどのバリアフリー対策が万全であれば、安心して老後を過ごせるでしょう。
住み替えの場合はバリアフリー対応の住宅を選び、建て替えの場合は自宅の設計に取り入れることで、より安全な住環境を実現できます。間取りを検討する際には、実際に生活しているときの日常的な動線を意識し、検討していただくことも重要です。
生活利便性の高い立地を選ぶ
スーパーマーケットや医療機関へのアクセスが良い立地を選ぶことで、老後の生活がより快適になります。徒歩10分圏内にスーパーマーケットや病院がある環境なら、移動の負担を減らし、日々の生活のストレスを軽減できます。
経済的な負担を抑える計画を立てる
住み替えや建て替えには費用がかかるため、年金額や貯蓄額を考慮し資金計画を立てることが重要です。補助制度や住宅ローンの活用も視野に入れ、無理のない形で住環境を整えましょう。
建て替えの際、「要支援」「要介護1~5」の認定がある場合には、高齢者住宅改修費用助成制度が利用できます。介護保険を利用して住宅改修を行う場合、上限20万円までの改修費用の9割(18万円)が支給される仕組みです。
(参考:厚生労働省「居宅介護住宅改修・介護予防住宅改修に係る介護保険の給付」
バリアフリーにするための工事に関しては、国だけでなく、お住まいの地方公共団体(自治体)によって補助制度を独自に設けているケースもあります。お住まいの地方公共団体で該当する制度があるかも、調べてみましょう。
不動産会社に相談する
建て替えか住み替えかを決める際には、不動産会社に相談することで、より適切な選択がしやすくなります。以下のポイントについて専門家の意見を聞いてみましょう。
- ・現在の住まいの価値を把握する
- ・建て替えと住み替えのコストを比較する
- ・住み替え先の選択肢を広げる
- ・補助金や税制優遇制度を活用する
現在の住まいの価値を把握する
まず、不動産会社に査定を依頼し、現在の住まいの市場価値を知りましょう。築年数や立地条件によって、建て替えた場合の資産価値や、売却して住み替える際の資金計画が大きく変わります。
建て替えと住み替えのコストを比較する
建て替えの場合、解体費用や新築費用、仮住まいの費用が発生します。一方で、住み替えの場合は売却資金を新居の購入費に充てられる可能性があります。不動産会社に相談することで、それぞれのコストや資金計画を具体的に検討できます。
住み替え先の選択肢を広げる
住み替えを検討する場合、どの地域や物件が自分に合っているかを不動産会社と一緒に探すのもおすすめです。バリアフリー設計のマンションや、医療・商業施設が充実したエリアなど、老後の暮らしに適した物件情報を提供してもらえます。
補助金や税制優遇制度を活用する
建て替えや住み替えには、住宅ローン減税や地方公共団体(自治体)の補助金などの支援制度が適用される場合があります。これらの情報を不動産会社から確認し、経済的な負担を抑える方法を検討しましょう。
“老後は住み替えか建て替えか?それぞれの利点と欠点、失敗しない選び方のコツ” への1件の返信
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