「住み替えを考えているけれど、住宅ローンがまだ残っている……」と不安に感じていませんか。
住み替え時に新しい住宅ローンを組むと、一時的にローンが二重になるケースがあります。この状況に直面する方は少なくありませんが、適切な対策を取ればスムーズに進めることが可能です。
なぜローンが二重になるのか、その理由を解説するとともに、メリットやデメリット、注意点についても詳しく紹介します。
住み替えで住宅ローンが二重になる理由
住み替えで住宅ローンが二重になるケースは以下の2通りです。
- ・買い先行で住み替えをしたケース
- ・売り先行でローンを完済できなかったケース
それぞれのケースについて、詳しく紹介します。
買い先行で住み替えをしたケース
旧居のローンを完済しないまま、買い先行で住み替えを行う場合、住宅ローンが二重になります。
買い先行は住み替えを行う際、新居を先に購入して引っ越し、空き家となった旧居を売り出す方式です。
ローンの負担は重くなりますが引っ越しが1回で済む点、売却活動に余裕を持てる点がメリットです。
売り先行でローンを完済できなかったケース
買い先行とは逆に、まず旧居を売却し、売却額で新居を購入する住み替え法を「売り先行」といいます。売却額によって購入する新居を決められるため、予算オーバーになりにくい点がメリットです。
しかし、旧居の売却額が低く、旧居のローンさえ返済できない場合は、二重ローンを組む必要が出てくるときがあります。
このように売り先行を選択しても住宅の二重ローンを避けられない場合がありますので、注意が必要です。
住み替えでローンを二重に借りるメリットとデメリット

住み替えでローンを二重で支払うことで、転居後の不動産がすぐに確保できるため、不動産売却において有利に進められるというメリットがあります。しかしその反面、返済額がかさみ家計が苦しくなるというデメリットがあります。
住み替えにおける二重ローンのメリットとデメリットを詳しく紹介します。
メリット
住み替えにおける二重ローンの主なメリットは以下の3点です。
- ・自由に売買タイミングを決定できる
- ・仮住まいをせずに引っ越しできる
- ・内覧ができるためより良い条件で売却できる
以下に詳しく紹介しましょう。
自由に売買タイミングを決定できる
二重ローンを組むことで、旧居の売却を待たずに新居を購入できます。売りと買いのタイミングを合わせる必要がないため、理想の新居を見つけた際に、旧居が売れていないからと諦める必要はありません。
また、住み替えを急ぐあまりに旧居を安く売却することもありません。妥協せずに旧居をなるべく高く売りたい、理想の新居を手に入れたいという場合に、二重ローンは有効です。
仮住まいをせずに引っ越しできる
売り先行では、旧居の売却から新居購入までにタイムラグが生じる場合があります。新居が見つかるまでは仮住まいをしなくてはならず、引っ越し費用に加え、賃貸住宅の敷金・礼金などの諸費用や、退去時の原状回復費用など出費が生じます。
さらに荷物が仮住まいに収容しきれない場合は、トランクルームを借りる必要も出てくるかもしれません。費用はもちろんのこと、荷物の梱包や整理といった手間がかかり、大きな負担になるでしょう。
二重ローンを組んで買い先行で住み替えを行えば、仮住まいの必要はありません。ローンを組んで買い先行で住み替えを行うことで、費用を抑えられる可能性があります。
内覧ができるためより良い条件で売却できる
内覧がしやすくなる点も二重ローンによる住み替えのメリットです。売り先行の場合は、入居中の住居に購入希望者を招くことになります。
寝室や倉庫といったプライベートな空間も見られるため、ストレスになることも少なくありません。購入希望者にとっても、生活感のある住居の内覧は気を使い、思うように部屋を確認できないこともあるでしょう。
二重ローンにより新居を先に購入、引っ越しを行えば、空き家の状態で旧居の内覧ができます。購入希望者、所有者ともにストレスなく、内覧にじっくり時間をかけられるため、より良い条件で売却できる可能性が高まります。
デメリット
二重ローンを組んで買い先行で住み替えを行う場合、特にデメリットとなるのは以下の3点です。
- 二重ローンが可能な金融機関が少ない
- ローン審査が厳しい
- 返済がかさみ生活費が圧迫される
それぞれのデメリットについて、詳しく紹介しましょう。
二重ローンが可能な金融機関が少ない
二重ローンに対応している金融機関は多くありません。二重ローンを組んで返済額が大きくなると、債務不履行になるリスクが高まるためです。
別の金融機関で新たなローンを組めば良い、と考えるかもしれませんが、住宅ローンを二重に利用する場合は、現在ローンを使用している金融機関と、新たに融資を受ける金融機関、双方の了承が必要です。
また、二重ローンが可能な金融機関であっても、一つ目のローンを自社で組んでいるなど、条件が定められている場合があります。
このように、住宅の二重ローンは利用自体が困難であり、そもそも選択できないケースも少なくありません。
ローン審査が厳しい
利用している金融機関が二重ローンに対応していても、ローン審査が下りるとは限りません。二重ローンを組む際には、通常のローンより審査が厳しくなります。返済額が大きくなり、高い与信(返済能力)が求められるためです。
多くの金融機関は、返済負担率35%程度を上限としています。旧居のローンで返済負担率の上限に達している場合、新たにローンを組むことは難しいでしょう。
買い先行で住み替えを行う際に、融資が下りないと予定が大きく狂ってしまいます。自分の収入や職業、年齢で二重ローンを組めるのか、事前にしっかりシミュレーションする必要があります。
場合によっては頭金を多く準備したり、売り先行に切り替えたりすることも考えなくてはならないでしょう。
返済がかさみ生活費が圧迫される
二重ローンを組むと、旧居と新居のローンを同時に返済します。月々の返済額が多くなり、生活費が圧迫されてしまいます。
不測の出費や収入減少が生じた場合に対処しきれず、さらにローンを抱え込む事態になりかねません。
また、単純に出費が増えるだけではなく、ローンによって返済額や返済日が異なる場合、管理が難しくなる点も問題です。
住み替えでローンを二重に借りるときの注意点
住み替えでローンを二重に借りるのは難易度が高いうえ、返済額がかさみ生活費を圧迫してしまう原因になります。
さらには、二重ローンのために思いがけない制約を受けてしまう場合もあります。
住み替えで二重ローンを利用する際には、どのような点に注意すると良いのでしょうか。また、負担を減らすためにはどのような対策を取れば良いのでしょうか。
以下に詳しく紹介します。
二重ローンを利用した場合の制約
二重ローンを利用した場合、ローン返済や売却活動に支障が出る場合があります。特に注意したいのは以下の2点です。
旧居の住宅ローンは控除の対象外になる
住宅ローンを利用して住宅を取得した場合、条件を満たせば、ローン残債に応じて所得税控除の適用を受けられます。
しかし、控除の対象となるのはあくまで債務者が居住している物件に限ります。二重ローンを利用して新居を取得し、住み替えを行った場合、控除の対象となるのは新居の住宅ローンのみです。
旧居の住宅ローンは控除の対象外になり、納税額が増えてしまうおそれがあるため注意が必要です。
旧居が売れなくても賃貸に出せない
ローン返済中は、旧居を人に貸し出すことはできません。住宅ローンはあくまで債務者自身が住むための物件を対象としているためです。
人の生活に必要不可欠な住居ローンは、貸し倒れのリスクが低いために融資審査は緩く、利率は低く設定されています。
同じ物件購入であっても、事業用ローン(不動産投資ローン)の利率は、住宅ローンより高いケースがほとんどです。
旧居の買い手がつかないからといって賃貸に出してしまうと契約違反と見なされ、契約内容によっては一括返済を求められるため注意が必要です。
しかし、想定外の転勤や介護などの理由による地方移住など、やむをえない場合は住宅ローン返済中の物件であっても賃貸に出せる可能性があります。ローンの残っている住宅を賃貸に出す場合は、まず金融機関に相談しましょう。
旧居をできるだけ高く売る
住み替えの際には、旧居をできるだけ高く売ることが重要です。旧居の売却額で繰り上げ返済ができれば、月々の負担を減らせます。
先述の通り、売却活動に時間をかけられる点が買い先行のメリットです。売却に強い不動産会社に相談して、じっくりと腰を据えて売却活動を進めていきましょう。
住み替えローンで借入元を一括化できることも
旧居のローンを残したまま住み替えを行う場合は、住み替えローンの利用も検討しましょう。住み替えローンとは、旧居のローンを完済する費用と、新居の購入費用をまとめて借入できるローンです。
住み替えローンを利用することで、新居購入の負担を減らせます。借入元が一本になるため、返済計画が立てやすい点もメリットです。
ただし、住み替えローンを利用するには、旧居の売却と新居の購入のタイミングを合わせる必要があります。
住み替えは通常の新居購入や引っ越しより、融資審査や購入タイミングなどがシビアです。成功させる一番の秘訣は、優秀な不動産会社に相談することです。
住み替えに強い不動産会社であれば、旧居の状態を見て売り先行・買い先行どちらが望ましいかアドバイスをしてくれるでしょう。また、融資審査のサポートや売却活動、新居探しも安心して任せられます。
特にテクニックが必要な住み替えだからこそ、信頼できる不動産会社を選ぶことが重要です。