家の買い替えは大きな決断ですが、ローンが残っている状態での売却や新居購入には、いくつかの注意点とステップがあります。しかし、複雑な手続きも、正しく進めればスムーズに進行できます。
ローンが残っている家の売却手続きから、新居購入までの流れを具体的に解説し、成功するためのポイントや注意点をわかりやすくお伝えします。
目次
ローンの残っている家を売る方法
ローンの残っている家を売却する場合は、ローン完済後に売買契約する必要があります。しかし、ダブルローンの状態が長く続くのは金銭的負担も大きいため、売り先行で進めるケースが大半でしょう。
新居購入を前にローン残債のある家を売却する方法は、以下の4つです。
- ・売却価格または預貯金でローンを返済する
- ・住み替えローンを利用する
- ・フリーローンで売却額とローン残高の差額を埋める
- ・返済可能な場合はダブルローンを組む
それぞれ詳しく見ていきましょう。
売却価格または預貯金でローンを返済する
預貯金に余裕がある、もしくは売却の目途が立っておりローンの残っている家を売って新居を買いたい場合は、預貯金または売却額でローン完済し、新居の契約を進めましょう。
金額によっては相続税がかかりますが、親や親せきから一時的に援助を受け、ローンを完済される方もいます。
住み替えローンを利用する
売却・自力でのローン完済が難しい場合、住み替えローンを利用し新居の購入費用に上乗せして、住宅ローン完済の不足額を融資してもらう方法があります。
ただし住み替えローンはオーバーローン(ローン残債が市場価格を上回るケース)には利用できないこと、売却と購入を同日決済する必要がある点に注意が必要です。
売却が確定し新居も確定し、どちらの関係者も同時に集合可能な日程を組むため調整が難しいことと、金利が高く、審査も厳しいことも考慮しておきましょう。
住み替えローンについてはこちらで詳しく紹介しています。
関連記事:住宅ローンはあるけど住み替えたい!住み替えローンは利用すべき?
フリーローンで売却額とローン残高の差額を埋める
目的の縛りのないフリーローンを利用することでも、ローンの残っている家を売り新居購入が可能です。
フリーローンは住宅ローンと異なり無担保です。金融機関からすると未回収となるリスクの高い融資ですから、金利も高く返済額が膨らみます。加えて融資審査も厳しくなるため、必ず利用できるとは限りません。
返済可能な場合はダブルローンを組む
ローン残高が少ない場合は、返済可能か判断のうえでダブルローンを組むことも一案です。ダブルローンが可能であれば、売却が決まらなくても新居購入できますし、納得の価格で売却する余裕も持てます。
ただしダブルローンを組むために審査は厳しくなることを考慮し、行動する必要があります。
新居を買うタイミングはいつがいい?

ローンのある家を売却することも踏まえ、新居を買う最適なタイミングはケースバイケースで以下の3つが考えられます。
- ・ローンの残っている家を売ってから
- ・ローンの残っている家が売れる前
- ・同時進行
ローンの残っている家を売ってから
ローンの残っている家を売ってから購入するメリットは、ダブルローンを組まず、売却額を支払いにあて金銭的負担を軽減し新居購入できることにあります。
デメリットとしては、ローンの残っている家を売却してから、新居へ引っ越しするまでの間に仮住まいのための費用・引っ越しが発生する点でしょう。
ローンが多く残っているほど、この方法を選ぶメリットはありますが、仮住まい期間が長いほど負担が増える点は考慮が必要です。
ローンの残っている家が売れる前
ローンの残っている家が売れる前に新居を購入するメリットは、仮住まいが不要で、余計な費用がかからないことです。
半面、家が売れる保証がないため売却が長引くと、ダブルローン状態が長引きます。そのため売却を焦ってしまい、安く売却してしまうケースもあります。
また、ローンを2つ組むことになるため、新居のローン審査が厳しくなることや、希望通りの借入が実現しないリスクもあるでしょう。
同時進行
新居購入と売却を同時進行するメリットは、ダブルローンにならず、仮住まいも必要ないため出費を最小限に抑えられることです。
デメリットとしては、売却と新居購入を同時進行するため、スケジュールが厳しくなる点でしょう。希望に合った新居を探すため、焦ってしまう方も多いです。
決算日も同時に行わなければ売却できず、新居の契約も達成できないため、スケジュール調整も難しくなります。
住み替えるタイミングについてはこちらで詳しく紹介しています。
関連記事:住み替えをするタイミングを解説。住宅ローン金利や経済情勢などからも考察
ローンの残っている家を売って新居を買うときの注意点
ローンの残っている家を売って新居購入する場合、以下の3点に注意していただくと、スムーズで無駄のない住み替えが実現できます。
- ・3,000万円の特別控除または買い替えの特例を利用する
- ・ローン完済前は支払いが滞らないよう資金計画する
- ・できるだけ高値で売る
それぞれ詳しく解説しますので、参考にしてください。
3,000万円の特別控除または買い替えの特例を利用する
家を売却すると、売却額に譲渡所得税が課せられますが、特別控除を受けると3,000万円は課税がまぬがれます。売却する不動産会社から教えてもらえるケースも多いでしょう。
特別控除を受ける主な条件は以下のとおりです。(参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
- ・所有者の居住用財産である
- ・住まなくなってから3年目の12月31日までに売却する
- ・申請する以前2年間で同様の申請をしていない
- ・同上の期間に「マイホームの買換え・マイホームの交換の特例」を受けていない
- ・売却不動産が「収用等の特別控除」を受けていない
- ・売主と買主が特別な関係にない(親子・夫婦など)
また、上に紹介した「マイホームの買換え・マイホームの交換の特例」は、上記で課税対象となったものの支払いを、新居売却時に繰り延べできる制度です。
買い替え時に支払う税金負担を軽減する措置ですが、特別控除との併用はできません。売却益が3,000万円を超える場合は「マイホームの買換え・マイホームの交換の特例」、そうでない場合は特別控除をおすすめします。
ローン完済前は支払いが滞らないよう資金計画する
住宅ローン完済前に支払いが滞ると、差し押さえられ、競売にかけられ売却もできなくなります。競売になれば売値も市価より安くなるため、条件も不利です。
住宅ローン完済前の支払いが延滞すると、最初に「支払い請求書」が届き、回数を重ねると「催告状」、それでも延滞すれば「期限の利益損失通知」が届きます。この段階からは、残りのローン残債の一括返済が求められます。
ここでの期限の損失、とはローンを借りている人が銀行から「分割返済でも良い」という権限を損失したことを指すものです。
ここでも延滞を継続すると「代位弁済通知」が届きます。これは保証会社が債務者(ローンを借りている人)に変わり、銀行に支払ったことを通知する書面です。ここからは銀行でなく、保証会社からの請求に切り替わるという通知でもあります。
さらに延滞すると、「競売開始決定通知」が届きます。これにより差し押さえが実行され、登記簿にも競売情報が登録され、第三者からも確認可能な状態となったこと、競売が開始されたことを通知する書面です。
できるだけ高値で売る
ローンの残っている家を売る場合は、できるだけ高値で買い取ってくれる不動産会社を探しましょう。なかには、他社と相見積もりでないなら、と安く買いたたこうとする会社もいます。
高く買い取ってくれる不動産会社に買い取ってもらうには、複数社に相見積もりをとることも重要なポイントです。あわせて買い手候補に良い印象を与えるため、内覧前にハウスクリーニングを行うなど、魅力的に映るよう家を整えることも重要でしょう。
売却時期もポイントで、買い手の多い秋(9~10月)や、転入・転勤が多い早春(2~3月)の時期に売却活動を開始するのもよいでしょう。
こうしたポイントも踏まえ、周辺の売却相場も鑑みて、最適な状況で売却できるよう活動してくれる会社なのかも踏まえ、良い不動産会社に仲介を依頼しましょう。