離婚後の新生活には、不安や期待が入り混じります。

生活が大きく変わる中で、「どこで暮らすか」という住まい選びは、心身の安定に大きく影響します。賃貸物件にするか、実家に戻るか、それとも新たにマイホームを購入するか、考えるべき選択肢はたくさんあります。

それぞれの選択肢にはメリットとデメリットがあり、自身や家族に合った最適な住まいを見つけることが大切です。住み替えの際に考慮すべきポイントや住まい選びの選択肢、失敗しないためのコツを紹介します。

離婚後の住み替えで考慮すべきポイント

離婚後に住み替えを検討する際、最も大切なのは今後の生活に最適な住環境を選ぶことです。

離婚によって生活は変化し、特に経済的な負担は大きいでしょう。住み替えは家族構成やライフスタイルの変化に適応する方法のひとつですが、いくつかのポイントを考慮する必要があります。知っておきたいポイントを解説します。

家を売るかそのままにするかの判断

離婚後に家を売るか、維持するかの判断は総合的に考える必要があります。

経済的な面では現在の家を売ることで得られる資金が、今後の生活にどのように影響するかが鍵となります。特に住宅ローンが残っている場合、ローン残高が家の売却価格を上回る「オーバーローン」状態となると、負債が残る可能性があります。

一方、ローンの支払いが無理なく続けられる場合は、家を維持することも選択肢のひとつでしょう。

心理的な面では、家に対する思い出や愛着があるかもしれませんが、元配偶者との思い出が詰まった家に住み続けることが、精神的な負担になる場合も出てきます。離婚後の生活を再スタートさせるためには、過去との決別が必要となることもあります。

生活面では子どもがいる場合、転校などを避けるために、家を維持することを選択するケースも多々あります。一方で家族の変化に応じて家の広さや場所を見直し、新たな住環境を選ぶほうが生活の質が向上する可能性もあるでしょう。

離婚したときの家のローンについてはこちらで詳しく紹介しています。
関連記事：離婚したら家のローンはどうなる？売却せず住み続けるのは危険？

子どもの学校や生活環境に合ったタイミングで

子どもは環境の変化に敏感で、転校や友人関係の変化は大きなストレスとなるおそれがあります。そのため、ストレスを最小限におさえることが大切です。

例えば、学年が変わるタイミングや、新学期が始まる前の長期休暇中などに住み替えを行うことで、子どもが新しい環境に適応しやすくなります。

また、通学の利便性も考慮すべきです。新しい住居が現在の学校から通える範囲内であれば、転校せずに済むため、子どもの心理的負担が軽減されるでしょう。

さらに地域でのクラブ活動や習い事など、学校外での交友関係も継続できるかどうかもポイントです。

子どもが思春期に差しかかっている場合、急な環境の変化は心に大きな影響を与えるかもしれません。子どもの年齢や発達段階を考慮して、住み替えのタイミングを慎重に検討しましょう。

住み替え後の生活費や収入の見通しを確保する

住み替えを検討する際には、住み替え後の生活費や収入の見通しをしっかりと立てることが大切です。

離婚後の生活は経済的に不安定になることが多いため、新たな住居の家賃や住宅ローン、光熱費、生活費などをカバーできるかどうかを事前に確認しましょう。

新しい住居を検討する際は、家賃や住宅ローンの支払いだけでなく、引っ越し費用、保証金、初期費用などの一時的な支出も考慮する必要があります。

また、生活圏の変化によって交通費や生活用品の購入費が増えるかもしれません。子どもがいる場合は、学費や塾代、習い事の費用なども計算に入れます。

住み替え後の経済的な見通しが不透明な場合は、無理に新しい住居に引っ越すのではなく、いったん現在の住居に住むことも方法のひとつです。

経済的な見通しをしっかりと立てたうえで、安心して新生活をスタートすることが離婚後の生活を安定させるためのステップとなるでしょう。

離婚後の住み替え先候補

離婚後に住み替えを検討する際はさまざまな選択肢がありますが、どこに住むのかを決めるのは特に重要な決断です。

住み替え先を選ぶには経済状況、家族のサポート、子どもの学校や生活環境などを総合的に考慮する必要があります。また、長期的な視点でその場所が今後の生活に合っているかどうかを考えなくてはなりません。

この項では、住み替え先候補について解説します。

• ・実家
• ・賃貸物件
• ・社宅や公営住宅
• ・友人宅やシェアハウス
• ・マイホームの購入

実家

離婚後の住み替え先として、まず考えられるのが実家です。実家に戻ることで、家族からのサポートを受けやすく、経済的な負担も軽減できる可能性が高いでしょう。

特に、子どもがいる場合は、育児や家事を手伝ってもらえることで、仕事と家庭の両立がしやすくなるメリットがあります。また、実家に戻ることで、精神的な安定を図ることができます。

ただし、実家に戻る際は、家族との生活習慣や考え方の違いに注意が必要です。長期間離れていた場合、両親との共同生活がうまくいかないことも考えられます。

加えて、実家に戻ることが長期的な解決策となるかどうかも慎重に考えたほうが良いでしょう。

賃貸物件

離婚後の住み替え先として、アパートやマンションなどの賃貸物件も有力な選択肢でしょう。短期間での住み替えや、状況に応じた柔軟な住まい選びが可能です。

離婚後すぐにマイホームを購入することに不安を感じる場合や、転職や子どもの進学などによる住環境の変更を視野に入れている場合、賃貸はメリットが大きいでしょう。

さらに、初期費用も比較的低く、敷金・礼金や引っ越し費用だけで新生活をスタートできる点も魅力です。

社宅や公営住宅

離婚後の住み替え先として、社宅や公営住宅も検討しましょう。特に勤務先に社宅がある場合は、通常の賃貸物件よりも安価な家賃で住めるため、経済的な負担が軽減されます。また、勤務先に近い場合が多く、通勤時間が短縮されるメリットもあります。

公営住宅は所得が一定以下の世帯や、離婚後の単身者・母子家庭に対して優先的に提供される場合が多く、家賃も相場よりも低く設定されています。

しかし、公営住宅は応募から入居までに時間がかかるケースや、入居条件が厳しいケースがあるため、事前に条件や手続きをよく確認しておきましょう。空きが少ないエリアでは、希望する地域に入居できないおそれがあるため、早めの情報収集が大切です。

友人宅やシェアハウス

離婚後、一時的に友人宅に住む、またはシェアハウスに住む選択肢もあります。

友人宅に滞在する場合、家賃や生活費の負担が減り、精神的なサポートも期待できます。しかし、長期的に頼りすぎると友人に負担がかかる可能性があるため、あくまで一時的な解決策として考えたほうが良いでしょう。

一方、シェアハウスはさまざまなライフスタイルを持つ人と生活できます。基本的に家賃はシェアし、生活費も安く済む場合があります。

また、シェアハウスではあらゆる価値観を持つルームメイトとコミュニケーションを取る機会があり、新たな人間関係の構築につながるかもしれません。

一方、プライバシーの問題や共同生活のルールがあるため、自身の性格や生活スタイルに合うかどうかをよく検討する必要があります。

マイホームの購入

離婚後にマイホームを購入することも選択肢のひとつです。

自分だけの住まいを持つことは、独立した生活を始めるための象徴ともいえ、精神的な安心感を得られるでしょう。また、賃貸とは異なり、月々の支払いがローン返済に充てられるため、将来的に資産になります。

子どもがいる場合、安定した環境を提供できる点も大きなメリットです。

離婚後の住み替えで失敗しないためのポイント

新生活のスタートに失敗しないためには、長期的な視点で住み替えを計画し、自身や家族にとって最適な選択をすることが大切です。

この項では、住居選びのポイントについて詳しく解説します。

仕事と生活の両立を考えた立地選び

離婚後に新生活を送るうえで、重要な要素のひとつが立地です。

仕事と生活のバランスを取るには、通勤時間や交通の利便性を考慮する必要があります。例えば、勤務地に近いエリアに住み通勤時間が短くなれば、子どもとの時間や自身のリフレッシュ時間を確保しやすくなり、精神的な余裕が生まれるでしょう。

また、生活に必要な施設やサービスの確認は必須です。スーパーや病院、銀行、保育園や学校などが近隣にあると、日常生活がスムーズに進むだけでなく、急なトラブルにも迅速に対応できます。

環境面では周囲の治安や騒音、自然環境などもチェックしましょう。仕事から帰宅してリラックスできる静かな環境かどうか、子どもが遊ぶ場所や家族で過ごせる公園などが近くにあるかどうかも大切なポイントです。

以上を総合的に判断のうえで、自身と家族にとって理想的な立地を選び、生活の質を向上させましょう。

将来の資産価値や想定外の出費も視野に入れる

離婚後の新生活は経済的に不安定になるおそれがあり、長期的な視点で住居を選ぶことが大切です。

例えば、家を購入しても自然災害による損害が発生し、修繕やリフォーム費用がかかるおそれがあります。また、数年後に資産価値が下がるリスクもあります。

こうしたリスクに備えるには、住み替え先のエリアの将来性や不動産市場の動向を事前にリサーチしておくことが大切です。

人気が高いエリアは資産価値が上昇する可能性もありますが、一方で価格が高騰して経済的な負担が増すこともあります。

将来の出費に備えて、余裕ある資金計画を立てたほうが良いでしょう。

住んでいた家を売却する際は、慎重に不動産会社を選ぶ

離婚後に住んでいた家を売却する場合、不動産会社選びは極めて重要です。

家の売却は人生の中でも大きな決断のひとつであり、特に離婚に伴う売却は、経済的にも精神的にも負担が伴います。そのため、信頼できる不動産会社を選び、適切なサポートを受けることで、スムーズでストレスの少ない取引ができるでしょう。

不動産会社によって売却価格に違いがあるため、複数社から見積りを取って比較検討することをおすすめします。売却を急ぐことで低価格で手放してしまうことがないよう、地域の相場や市場の動向をしっかりと把握しておくことが必要です。

さらに、不動産会社の実績や評判も重要です。信頼できる会社は、適切な価格で売却を進め、必要な手続きや書類作成を迅速かつ正確に進めます。

以上の理由により、不動産会社に相談や仲介を依頼し、売却をスムーズに進めることで、納得のいく売却につながります。

適正な見積りを取るためにも、まずは不動産会社に相談しましょう。

住み替えでよくある失敗についてはこちらで詳しく紹介しています。
関連記事：家の住み替えでよくある失敗例と対策、不動産会社の選び方を解説