マンション住み替え時の税金の種類と計算方法!安く抑えるポイントは?

マンションの住み替えイメージ

マンションの住み替えを考える際に、避けて通れないのが税金の問題です。住み替えにかかる税金の種類やその金額を把握していないと、思いがけない出費に驚くこともあります。

ここでは、マンション住み替え時にかかる税金の種類や計算方法、そして税金を安く抑えるためのポイントについて、わかりやすく解説します。

居住中の家の売却にかかる税金の種類と計算方法

まずは、家を売却する際にかかる税金の種類と計算方法を見ていきましょう。

住居と投資用の不動産では税金の計算法が異なるため、今回の記事では、住居に焦点を絞って紹介します。

譲渡所得税

譲渡所得税は家の売却益にかかる税金で、「所得税」、「住民税」、「復興特別所得税」の3種類の税金を合算したものです。

復興特別所得税は、2011年に発生した東日本大震災の被災地復興を目的とした税金で、
2037年12月31日まで所得税に上乗せされます。

譲渡所得税の種類と税率

譲渡所得税は、家を所有していた期間によって「短期譲渡所得税」と「長期譲渡所得税」の2種類に分類されます。

条件と税率をまとめると、以下のようになります。

短期譲渡所得税と長期譲渡所得税の違い

譲渡所得税の別所有期間税率
所得税住民税復興特別所得税※2
短期譲渡所得税5年以下30%9%0.63%39.63%
長期譲渡所得税5年超15%5%0.315%20.315%
※所有期間:売却した年の1月1日時点での経過年数

短期譲渡所得税の税率は長期の倍程度で、バブル期に頻発した物件の転売が原因です。

物件が投機資産として短期間で売買されると、家としての本来の目的を果たせなくなります。そのため、短期間での物件売却に高額の税金に課税して転売を抑制しているのです。

また、所有期間が10年超の場合、「10年超所有軽減税率の特例」が利用でき、税率は以下のようになります。

10年超所有軽減税率の特例が適用された場合の税率

課税譲渡所得額所得税住民税復興特別所得税
6,000万円以下の部分10%4%0.21%14.21%
6,000万円超の部分15%5%0.315%20.315%

特例の適用を受ける場合は一定の条件を満たすことが必要です。詳細は、国税庁の「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」からご確認ください。

譲渡所得税の計算方法

譲渡所得税・住民税は譲渡所得に税率をかけることで求められます。譲渡所得の計算方法は以下のとおりです。

譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)

譲渡収入金額

土地や建物の譲渡の対価として買主から受け取る金額です。

不動産の売却益だけではなく、譲渡から年末までの期間に対応する固定資産税や都市計画税、金銭の代わりに受け取った物や権利、その他経済的な利益も譲渡収入金額に含まれます。

取得費

土地や建物の購入費用、購入時の仲介手数料や税金などが該当します。

また、建物の代金は、取得費から減価償却費に相当する金額を差し引きます。

減価償却費とは、固定資産の資産価値が低下すると見なし、会計の際に見積もる費用を指します。建物は経年により劣化して価値が下がるため、取得費から減価償却費を差し引く必要があるのです。

減価償却費は以下の計算式で計算されます。

減価償却費=建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数(所有期間)

償却率は建物の構造によって異なり、以下のようになっています。

建物の構造別、償却率

建物の構造償却率
木造0.031
鉄骨鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造
0.015
軽量鉄骨造
骨格材が4ⅿⅿ超
0.020
軽量鉄骨造
骨格材が3ⅿⅿ超4ⅿⅿ以下
0.025
軽量鉄骨造
骨格材が3ⅿⅿ以下
0.036

譲渡費用

土地や建物を売るためにかかった費用です。

売却時の仲介手数料や印紙税、土地を売るために建物を壊した場合の取り壊し費用・建物の損失額などが該当します。

譲渡所得税の計算例

以下の条件をもとに、譲渡所得税を計算してみましょう。

  • ・建物:マンション(鉄筋コンクリート造)
  • ・購入価格:5,000万円(建物4,500万円、土地500万円)
  • ・売却価格:6,000万円
  • ・譲渡費用:200万円
  • ・所有期間:6年

1.減価償却費を計算する

まずは減価償却費を計算します。

鉄筋コンクリート造の減価償却率0.015を当てはめて計算すると、以下のようになります。

減価償却費=4,500万円×0.9×0.015×6年=364.5万円

2.取得費を計算する

得られた減価償却費を用いて取得費を計算します。

取得費=500万円+(4,500万円-364.5万円)=4635.5万円

3.譲渡所得税を計算する

得られた取得費を計算式に当てはめて譲渡所得税を計算します。

譲渡所得税は(所得税+復興譲渡所得税)と住民税に分けて計算し、小数点以下は切り捨てとなります。

所得税+復興譲渡所得税={6,000万円-(4,635.5万円+200万円)}×15.315% =178万3,431.75円

小数点以下切り捨てで178万3,431円

住民税={6,000万円-(4,635.5万円+200万円)}×5%=58万225円

譲渡所得税合計は178万3,431円+58万225円で236万3,656円となります。

このように、マイホームで譲渡益が出ると数百万円単位での課税になります。売却益を元手に住み替え用のマンションを購入しようとした際に、思わぬ出費になり計画が崩れてしまうことにもなりかねません。

その救済措置として設けられているのが「3,000万円特別控除」です。3,000万円特別控除に関しては、後ほど詳しく紹介しましょう。

登録免許税

マイホーム売却における登録免許税とは、「抵当権の抹消登記」及び「所有権の移転」にかかる税金です。

抵当権の抹消登記にかかる登録免許税

住宅ローンを利用して購入した家には、金融機関により抵当権が設定されています。万が一ローンが払えなくなったときに備えて、家を担保にするためです。

家を売却する際には登録免許税を支払い、抵当権を抹消する必要があります。

抵当権抹消に必要な登録免許税は、家もしくは土地の個数×1,000円です。一戸建てであれば、家と土地に1,000円ずつ、計2,000円の税金がかかります。

また、抵当権の抹消登記にかかる登録免許税は通常、売主が支払います。

所有権の移転にかかる登録免許税

所有権の移転にかかる登録免許税は、家の名義変更を行う際に必要な税金です。

法律上は売主、買主共同で納めるとされていますが、実情では売主が支払うのが一般的になっています。

税額は土地・家ともに課税標準額の2%ですが、令和6年度の税制改正により、以下のとおり軽減税率が適用されます。

登記の種類別、登録免許税の軽減税率

登記の種類軽減税率適用期限
土地の売買による所有権の移転登記1.5%令和8年8月31日まで
住宅用家屋の所有権の移転登記0.3%令和9年8月31日まで

通常の場合、課税標準額は固定資産価格と同額です。ただし、一定の条件を満たした土地は特例措置や負担調整措置が適用され、固定資産価格より安く設定される場合があります。

固定資産税の課税明細書で確認可能です。

消費税

個人が家を売却する際には、消費税はかかりません。消費税は、事業者が事業として行う取引の際に発生する税金であるためです。

個人事業主や法人が投資用不動産を売却する場合は、商取引と見なされ消費税がかかります。

また、不動産会社に支払う仲介手数料や、司法書士に支払う登記申請などに対する報酬には10%の消費税がかかります。

印紙税

印紙税は課税文書にかかる税金です。家を売却する際に交わす、売買契約書は課税文書のひとつであり、印紙税が必要です。

売買契約書の印紙税は誰が払うかが決められていませんが、売主と買主が共同で支払うケースが一般的です。

書面に収入印紙を貼り、消印することで納税したと見なされます。

印紙税額は契約金額によって異なります。

また、令和9年3月31日までは軽減措置の対象となり、税率が低くなります。契約金額と税率(本則税率・軽減税率)は以下のようになります。

契約金額別の印紙税率と軽減税率

契約金額本則税率軽減税率
100万円超~500万円以下2,000円1,000円
500万円超~1,000万円以下1万円5,000円
1,000万円超~5,000万円以下2万円1万円
5,000万円超~1億円以下6万円3万円
1億円超~5億円以下10万円6万円
※契約金額100万円以下及び5億円超は、一般的なマイホーム売却額に相当しないため省略

マンション購入にかかる税金の種類と計算方法

続いて、マンション購入にかかる税金の種類と計算方法について解説します。

登録免許税や印紙税など売主と重複するものもありますが、買主と売主では同じ税金でもとらえ方が多少異なるという点を押さえておきましょう。

不動産取得税

不動産取得税は、不動産の所有権を取得した際に課される税金です。購入だけではなく、交換や新築、増築の際にも課されますが、通常の相続は課税の対象外です。

税率は課税標準額の4%ですが、令和9年3月31日までは税率の軽減措置が取られ、3%となっています。

また、条件を満たすと課税標準から控除を受けられる場合があります。

参考:東京都主税局「不動産所得税の軽減制度について」
参考:神奈川県「不動産取得税」

登録免許税

不動産の登記手続きを行う際には、登録免許税を納税する必要があります。マンション購入に関する登記手続きは、以下の3種類です。

マンション購入に関する登記手続きの種類

登記手続きの種類内容本則税率軽減税率支払者
所有権移転登記中古マンションを購入する際に、所有権の名義変更を行うために行う課税標準税額×2%課税標準税額×1.5%(土地:令和8年8月31日まで)課税標準税額×0.3%(家屋:令和9年8月31日まで)買主・売主が共同で支払う※慣習的には買主が支払う
所有権保存登記新築マンションを購入・取得・建築する際に必要課税標準税額×0.4%課税標準税額×0.15%(令和9年8月31日まで)買主
抵当権設定登記住宅ローンを組んで購入する場合、購入した不動産を担保にして融資をうけるために行う登記課税標準税額×0.4%課税標準税額×0.1%(令和9年8月31日まで)買主

消費税

消費税は、法人が事業として取引を行う際に課される税金です。新築マンションは原則として法人が販売するため、消費税がかかります。

中古マンションの場合は、売主によって課税の有無が変わります。

  • ・売主が法人の場合:課税対象
  • ・売主が個人の場合:非課税対象

また、土地はいずれの場合も非課税対象になります。

以上のことから、マンションが以下の条件下にあると仮定し、消費税を計算してみましょう。

  • ・マンションの価格:5,000万円(うち建物部分4,500万円、土地部分500万円)
  • ・不動産会社より購入

上記の場合、消費税は4,500万円×10%=450万円です。また、売却時と同じく、仲介手数料や報酬には消費税がかかります。

印紙税

家の売却と同じく、購入時にも印紙税がかかります。

売買契約書にかかる印紙税の支払者は定められていません。

個人間で売買契約を結ぶ際は双方が共同で印紙税の支払いを行うのが一般的ですが、不動産会社から購入する場合は買主の負担になる場合もあります。

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マンションの住み替えにかかる税金を安くするポイント

マンションの住み替えには、さまざまな税金がかかることがわかりました。納税は義務とはいえ、少しでも安く抑えたいところです。

特に現在では、家の売買に伴う特別控除や特例などがありますので、うまく利用すれば節税が可能です。

最後に、マンションの住み替えにかかる税金を安くするコツを紹介します。

いま住んでいる家は5年以上所有してから売る

譲渡所得税・住民税は5年を境に、税率が大幅に変わります。5年以上所有すれば長期譲渡とみなされるため、納税額を安くできます。

ここで注意したいのが、所有期間の定義です。売却する年の1月1日時点で5年を超えていなければ、長期譲渡と見なされません。

例えば、2019年10月1日に購入した家を2024年10月1日に売却する場合、実際の所有期間は5年ですが、譲渡所得税の決まりでは4年3ヶ月となり、長期譲渡には該当しません。

ただし、条件を満たせば「3,000万円特別控除」を利用することで、所有期間にかかわらず譲渡所得税を大きく軽減できます。次項で詳しく解説します。

3,000万円特別控除を利用する

3,000万円特別控除は、居住用不動産を売却した際、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。

3,000万円特別控除を利用できる要件

3,000万円特別控除を利用するには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。

  • ・下記のいずれかを満たすマイホームであること
    a. 現在、主に住んでいる自宅である
    b. 転居済みの場合、転居後3年目の年末までの売却である
    c. 土地の売却契約締結が解体から1年以内であり、その土地を賃貸していない
    d. 単身赴任の場合、配偶者が住んでいる建物である
  • ・物件の買主が親族や夫婦、同族会社など、特殊な関係でないこと
  • ・売却した年の前年、前々年に、3,000万円の特別控除またはマイホームの譲渡損失が出た場合の損益通算及び損失の繰越控除の特例の適用を受けていないこと
  • ・売った年、その前年及び前々年に、マイホームの買い換えや交換の特例を受けていないこと
  • ・売却した不動産に関して、固定資産の交換特例、収用等の特別控除など、ほかの特例の適用を受けていないこと
  • ・災害によって売却する場合、住まなくなった日から3年後の年の12月31日までに売ること

3,000万円特別控除を利用する際の計算式

3,000万円特別控除を利用する際の計算式は、以下のようになります。

譲渡所得税の税額=(譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除)×税率
※税額がマイナスになった場合は0円とする

この計算式に、先ほど「譲渡所得税の計算例」で挙げた具体例を算入すると、以下のようになります。

譲渡所得税の税額={6,000万円-(4635.5万円+200万円)-3,000万円}×20.315%
            =-372万8,818.25円
マイナスになったため0円(実際の控除額1,164万5,000円)

特別控除を利用することで、200万円以上もの節約になることがわかります。

3,000万円特別控除を利用する際の注意点

3,000万円特別控除は譲渡所得税を大きく軽減できる便利な制度ですが、利用の際には以下の2点に注意する必要があります。

  • ・確定申告が必要
    控除を受けるためには、家を売却した翌年に確定申告を行わなければなりません。売買契約書の写しを添付する必要がありますので、必ず準備しておきましょう。
  • ・他の制度と併用できない場合がある
    3,000万円特別控除と併用できない控除や特例があります。どの制度を利用すればより手残りが多くなるかを、慎重に検討する必要があるでしょう。

買い換えで損失が出たら、特例を利用する

買い換えで損失が出た場合に、所得税を圧縮できる特例があります。

2023年12月31日までにマイホーム(旧住宅)を売却し、新たにマイホーム(新住宅)を購入した際に、売却損(譲渡損失)が発生した場合、一定の条件を満たすと他の所得と損益通算ができるというものです。

さらに、損益通算をおこなっても控除しきれない損失部分は、翌年以後3年以内にわたって繰越控除ができます。

損益通算により課税対象となる所得額が少なくなるため、所得税を圧縮できるというわけです。

特例を利用できる要件や申告方法については、国税庁のホームページをご参照ください。

参考:国税庁「マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき」

売却益が少なければ、住宅ローン控除を検討する

住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマイホームを購入した際、一定の条件を満たすと最大13年間、ローン残高の0.7%を所得税から控除できる制度です。※借入限度額や控除期間は住宅の条件によって異なります。

住宅ローン控除を利用できる主な要件は以下のとおりです。

  • ・自らが居住するための住宅であること
  • ・合計所得金額が2,000万円以下であること
  • ・住宅ローンの借入期間が10年以上であること
  • ・引っ越しまたは工事完了から6カ月以内に入居すること
  • ・昭和57年以降に建築、または現行の耐震基準に適合すること

その他、住宅の性能や新築・既存によって条件は異なります。詳細は国税庁のホームページでご確認ください。

参考:国税庁「マイホームを持ったとき」

住宅ローン控除を利用する際の注意点

住宅ローン控除を利用する際には、以下の点に注意する必要があります。

  • ・省エネ基準を満たさない新築住宅は対象外
    令和6年の税制改正により、省エネ基準を満たさない新築住宅は住宅ローン減税の対象外になりました。ただし、令和5年末までに新築の建築確認を受けた住宅に令和6・7年に入居する場合は、借入限度額2,000万円、控除期間10年間で住宅ローン減税が適用されます。
  • ・確定申告が必要
    住宅ローン控除を利用する際には、3,000万円特別控除と同じく確定申告が必要です。住宅借入金等特別控除額の計算明細書、登記事項証明書、売買契約書の写し、住宅ローンの年末残高等証明書など、必要書類が多いため早めに準備しておきましょう。
  • ・3,000万円特別控除と併用できない
    住宅ローン控除と3,000万円特別控除は併用できません。譲渡所得(売却益)が少ない場合は住宅ローンのほうが有利ですが、多い場合は3,000万円特別控除を選んだほうが良いでしょう。
  • ・所得がないと利用できない
    住宅ローン控除は、払い過ぎた所得税を還付する制度です。そのため、所得がない場合は利用できません。例えば、マイホームの買換え特例を利用して所得がゼロになると、住宅ローン控除は適用されません。

    マイホームの売却や購入にはさまざまな税金が課されますが、納めるべき税金を減らせる制度も数多くあります。条件が複雑なものや併用ができないものもありますので、ご自身のケースではどの制度が利用できるのか、どの制度を選べばもっともお得なのかを把握する必要があります。

    自分で判断ができない場合は、不動産会社に相談してみましょう。豊富な知識と経験を持つ不動産売買の専門家から、適切なアドバイスを受けられるはずです。
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