親の不動産でも売却はできる?生前と相続後では異なる特例も解説

親と子ども夫婦

親の不動産は基本的に所有者である親自身にしか売却ができません。しかし、一定の要件を満たすことで配偶者や子どもでも売却ができる場合があります。

この記事では親の不動産を売却する方法について分かりやすく紹介します。

また、売却時にかかる税金や利用できる特例についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

親の不動産を売却する方法

親の不動産の売却方法には、3つの方法があります。それぞれ詳しく解説していきます。

代理人として売却する

親に売却の意思はあるが、何らかの理由で売却に必要な手続きができない場合には代理人になることで売却ができます。代理人による売却は、委任状を作成し、売却に必要な権限を移すことで、所有者と同じ法的効力を発揮できます。

委任状は、代理人による申請が本人の意思に基づくものであることを証明するものです。委任状の書式に決まりはありませんが、主に以下の項目を記載します。

  • 代理人の氏名・住所・生年月日・本人との関係
  • 委任者の署名・捺印・生年月日・住所・電話番号
  • 登記簿謄本に記載された物件の情報
  • 売却に関する決め事
  • 委任状の有効期限と範囲

また、委任状に添えて以下の書類を提出する必要があります。

  • 委任者の印鑑証明書および実印
  • 委任者の住民票
  • 代理人の印鑑署書および実印
  • 代理人の住民票および本人確認書類

成年後見人として売却する

親が認知症などで自分の意思を表現するのが難しい場合には、成年後見人制度を利用することで売却ができます。

成年後見人制度は、認知症や精神障害・知的障害などによって判断力が低下した人を支援し守る制度です。

後見人になるための流れは次のとおりです。成年後見人になるには、一般的に3カ月程度かかります。

  1. ①書類の作成
    後見人になるためには、申立書のほかに被後見人の戸籍謄本・住民票・診断書・登記簿謄本・年金通知書などの書類が必要です。また後見人の戸籍謄本や住民票などの書類が必要なので、手間と時間を要します。忙しい人は司法書士に依頼するのもよいでしょう。

  2. ②申立書類の提出
    申立に必要な書類を用意し、裁判所に申請します。

  1. ③面接と審査
    裁判所職員による面接と審査が行われ、成年後見人を決定します。

  1. ④後見登記
    後見内容が登記され、被後見人と後見人が誰であるかの登記事項証明書が発行されます。


相続後に売却する

相続後に売却する場合は、まず所有権を相続人に移転登記して名義を変更する必要があります。

相続してから、相続登記までの流れは以下のとおりです。

  1. ①遺言書の有無を確認する
    遺言書がある場合には、遺言書に従って相続手続きを行います。

  1. ②遺産分割協議
    遺言書がないケースでは、遺産分割協議により分割方法を決めます。


  2. ③相続するか放棄するか決定
    相続放棄や限定承認は、相続があったと知ってから3カ月が期限なので、それまでに決めなければなりません。


  3. ④相続登記
    相続登記を行って、名義を変更します。

不動産を売却するなら、まずは価格査定から

無料査定はこちら

親の不動産を売却する際に発生する税金

親の不動産を売却する場合にはさまざまな税金が発生します。あらかじめ確認しておきましょう。

譲渡所得税

不動産を売却して利益が出た場合には、譲渡所得税という税金を支払わなければなりません。

資産を譲渡することによって得た所得を譲渡所得といいます。

譲渡所得税は譲渡所得に税率をかけることで算出されます。譲渡所得は次のとおり算出します。

譲渡所得=不動産売却価格-(物件取得費+譲渡費用)

物件の取得費とは、売却する不動産を購入したときの代金で、不動産取得税などの税金・仲介手数料・測量費なども含まれます。相続の場合は被相続人が取得にかかった費用ということになります。

譲渡費用とは不動産を売ったときに支払った費用で、仲介手数料や印紙税・測量費などが該当します。

このように算出した譲渡所得に税率をかけますが、所有期間によって税率は異なるので注意が必要です。所得期間が5年超の場合は長期譲渡所得といい、5年以下の場合には短期譲渡所得といいます。

相続の場合では、被相続人が取得した時から、相続人が譲渡した時までの所有期間で判断します。

それぞれの税率は次のとおりです。長期譲渡所得の方が税率は安くなります。

 短期譲渡所得長期譲渡所得
期間5年以下5年超
税率39.63%20.315%

印紙税

不動産を売却する場合、売買契約書に印紙を貼り税金を納めなければなりません。印紙税は、売買契約に記載される金額によって異なります。

契約金額税額軽減措置
100万~500万円以下2,000円1,000円
500万~1,000万円以下10,000円5,000円
1,000万~5,000万円以下20,000円10,000円
5,000万~1億円以下60,000円30,000円
1億円~5億円以下100,000円60,000円

印紙税の軽減措置については、2024年3月31日までとなっています。

登録免許税

登録免許税とは、登記のためにかかる費用です。

売主が不動産を購入する際にローンを利用していた場合には、金融機関が抵当権を設定しています。売主は不動産を売却する際には、抵当権を抹消しなければなりません。

抵当権抹消登記を行うために登録免許税を納める必要があります。

登録免許税は不動産の数×1,000円です。土地と建物の売却なら、2,000円となります。

相続に関するお問い合わせは
ファミリアホームサービスまで

お問い合わせはこちら

生前と相続後では利用できる特例や控除が変わる?

控除と書かれた箱

親の不動産を売却する際に支払う税金は、生前と相続後で利用できる特例や控除が異なります。それぞれ詳しく解説していきます。

生前に利用できる特例や控除

親が生きているときに売却する場合に利用できる特例や控除を2つ紹介します。

居住用財産の3,000万円の特別控除

居住する家を売却する場合には、所有期間の長さに関係なく譲渡所得から3,000万円を控除できます。

たとえば、6,000万円で購入した自宅を9,000万円で売却した場合、本来なら利益分の3,000万円に対して税金がかかります。

しかし、特別控除を利用することで3,000万円を控除できるので課税譲渡所得をゼロにできます。

特例を受けるための要件は次のとおりです。

  • 居住していた住宅の売却であること
  • 以前住んでいた場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の年末までに売却すること
  • 住宅を取り壊した場合は、1年以内に譲渡契約を結び、住まなくなった日から3年を経過する日の年末までに売却すること
  • 貸駐車場などに使用していないこと
  • 売った相手が夫婦や親子・近親者でないこと

10年超の居住用財産を譲渡した場合の特例

所有期間が10年超の場合は所有期間が5年超の長期譲渡所得よりさらに有利な税率が受けられます。

 6千万円以下の部分6千万円超の部分
税率14.21%20.315%

この特例を受けるためには、前述の居住用財産の3,000万円の特別控除と同じ要件を満たす必要があります。

相続後に利用できる特例や控除

相続後に利用できる特例や控除について紹介します。

取得費加算の特例

譲渡所得税の算出方法は上述しましたが、相続の場合は取得費に相続税の一部を加えられる「相続税の取得費加算」が利用できます。

取得費を大きくすることで、譲渡所得にかかる税金を軽減できます。

この特例を使うためには次のような要件を満たす必要があります。

  • 相続発生後、3年10カ月以内に相続した財産を売却すること
  • 財産を取得した人に対し、相続税が課税されること

相続空き家の3,000万円特別控除

空き家を相続して、売却した場合に要件を満たせば譲渡所得から3,000万円を控除できます。

この特例を利用するためには次のような要件を満たす必要があります。

  • 相続開始の直前に、亡くなった人が1人で住んでいたこと
  • 1981年5月31日以前に建築された家屋であること
  •  区分所有建築物以外の建物であること
  • 譲渡代金が1億円以下であること

一度プロに相談してみよう

親の不動産を売却する方法や売却時に利用できる控除などは大変複雑で、把握することは困難です。

最低限の知識を付けた後はプロに相談することがおすすめです。売却のタイミングや売却方法などに関して適切なアドバイスをくれるでしょう。

名古屋市の不動産に関する
お問い合わせは
ファミリアホームサービスまで

お問い合わせはこちら