新しく住宅を買うときに、資金調達方法として重要なのが住宅ローンです。しかし、住宅ローンについて、よく知らないという人も多く、思わぬ誤解からトラブルに発展してしまうこともあるようです。
不動産会社や金融機関に相談するのもよいのですが、まずは損をしないために最低限の知識を身につけることが重要です。
本記事では、住宅ローンの相場と基本を紹介します。
目次
住宅ローンの相場は?いくら借りているのか
一般的に住宅を購入する際、住宅ローンはいくらくらい借りているのでしょうか。
国土交通省住宅局の「令和元年度住宅市場動向調査報告書」(以降住宅市場調査とする)を元に紹介していきます。
いくらぐらいの物件を購入しているのか
住宅市場調査による住宅購入資金の平均額は下表のとおりです。
物件種別 | 購入資金 |
---|---|
新規で土地を購入した注文住宅 | 4,615万円 |
建て替えの注文住宅 | 3,555万円 |
分譲戸建住宅 | 3,851万円 |
分譲マンション | 4,457万円 |
中古戸建住宅 | 2,585万円 |
中古分譲マンション | 2,746万円 |
新築物件では3,500万~5,000万円、中古では2,500万~2,800万円が相場のようです。
自己資金はいくら必要なのか
自己資金はどのくらい用意すればよいのでしょうか。
現在は超低金利ということもあり、全額を住宅ローンで借りる人も多いです。
住宅市場調査では自己資本比率の平均は25~50%となっており、自己資金を多く用意している方が多いようです。
物件種別 | 自己資本比率 |
---|---|
新規で土地を購入した注文住宅 | 27.2% |
建て替えの注文住宅 | 48.5% |
分譲戸建住宅 | 26.5% |
分譲マンション | 39.4% |
中古戸建住宅 | 39.1% |
中古分譲マンション | 43.5% |
自己資金は多い分だけ、返済の負担が小さくなりますが、一時的に資産が少なくなります。
急な出費に対応できなくなってしまい、住宅ローンの以上の金利でお金を借りなければいけなくなってしまっては困ります。万が一のことを想定して、無理のない範囲での自己資金を使うために調整が必要でしょう。
借入額の相場と月々の返済額は?
住宅市場調査による借入額と年間返済額の平均は下表のとおりです。
物件種別 | 借入額 | 年間返済額 |
---|---|---|
新規で土地を購入した注文住宅 | 3,361万円 | 123.2万円 |
建て替えの注文住宅 | 1,830万円 | 123.2万円 |
分譲戸建住宅 | 2,830万円 | 121.6万円 |
分譲マンション | 2,702万円 | 131.6万円 |
中古戸建住宅 | 1,575万円 | 104.9万円 |
中古分譲マンション | 1,551万円 | 94.6万円 |
※年間返済額の「新規で土地を購入した注文住宅」と「建て替えの注文住宅」は合わせて「注文住宅」として算出
建て替え以外の新築物件では2,500万~3,500万円、中古では1,500万~1,600万円が平均的な借入額といえそうです。
年間返済額からみる月々の返済額は、新築の場合は平均して約10万円です。
中古物件の場合、月々の返済額は約8万円が平均です。
なお、紹介した月々の返済額はボーナス返済をされる場合にはボーナス返済額に応じて少なくなります。
金利の相場は?
住宅ローンの金利は大きく分けて3種類から選択できます。
・変動金利
・固定金利
・固定期間選択
本章では、各金利の特徴と相場について解説します。
変動金利
変動金利は借入時の金利が1番安いのですが、今後景気が回復した場合に金利が上昇する可能性があります。
金利が高くなったら繰上げ返済も視野に入れて、最初はできるだけ低い金利を選びたいという人におすすめです。
現在の金利は、年0.4%から0.6%がほとんどです。金利の安さから近年変動金利を選ぶ人が増えています。
固定金利
固定金利は借入時の金利が完済まで続くので、返済計画が立てやすくなります。しかし、現在の状況では借入当初の金利が変動金利より高く設定されていることが多くなります。
長期住宅ローンで有名なフラット35は固定金利です。金利上昇のリスクを避けたい人におすすめです。現在の金利は1%から1.5%程度で、変動金利よりも約2倍も高くなります。
高金利ではありますが、金利上昇による返済額の上昇がないため、将来の安心を買うという意味で根強い人気があります。
固定期間選択
固定期間選択は、3年間、5年間、10年間など決まった期間だけ固定金利になり、その後は変動金利になります。
固定金利中の金利は固定金利より低く設定されているものがほとんどで、固定期間が短いほど金利が低くなります。ローン残高が多いうちは固定金利で返済額を安定させて、ローン残高が減ってきたら金利上昇リスクを許容できる人におすすめです。
金融機関は審査時にどこを見ているのか
国土交通省が1,274の金融機関に対して行った「令和2年度民間住宅ローンの実態に関する調査」で、融資を行う際に審査する項目の上位は以下のとおりでした。
・完済時年齢
・健康状態
・担保評価
・年収
・勤続年数
完済時年齢
一般的に定年を迎える65歳以降は収入が減るため、金融機関としては定年退職する前に完済して欲しいというのが本音です。
そのため、長期間でローンを組む場合、現役中に完済を見込める20代や30代での借り入れが審査時にはプラスに働きます。
健康状態
直近に病気をしたり手術をしたりしていると審査に影響する場合があります。
また、住宅ローンを利用するとき一緒に入れる生命保険の「団体信用生命保険」に加入するため、金融機関としてもあらかじめ健康状態を把握しておきたいというのが本音でしょう。
団体信用生命保険に加入することで、債務者が死亡したり重い病気になったりしたときにローン残高がゼロになります。
しかし、団体信用生命保険では保険金が降りない病気になり、働けなくなってしまって住宅ローンが返済できないこともあります。
その可能性を少なくするため、健康状態を確認しています。
担保評価
もし、債権者が住宅ローンを払えなくなったとき、債務者は住宅を売却してローンの返済に充てなければなりません。
しかし売却価格が低く住宅を売却してもローンが返済できなければ、貸し倒れる可能性があります。そのため金融機関は担保である住宅の価値を評価しています。
年収
税込年収の30%くらいが、住宅ローンの返済に充てられる限界だといわれています。
年収のわりに返済額が多い場合、返済できなくなる可能性が高くなるので、年収を調査して返済能力があることを確認しています。
勤続年数
勤続年数は1年以上としている金融機関が多いようです。
勤続年数が短すぎると、またすぐに退職してしまい、ローンの返済ができなくなってしまわないか心配するためと、1年以上働かないと現在の職場での年収がわからないためと考えられます。
今、住宅ローンは借り入れどき?
超低金利時代だとか、住宅ローン減税の引き下げだとかいわれていますが、今は住宅ローンの借り入れどきなのでしょうか。本章では、借り入れタイミングについて解説します。
超低金利だが今は住宅ローンは借り時か?
住宅ローンの金利だけを見るならば、今は絶好の借り入れどきといえるかもしれません。
もし、すでに住宅ローンを借りており、現在も返済している金利が高い場合、借り換えを検討するのもよいと思います。
しかし、金利が安いことやコロナ禍で増えたおうち時間を追い風に、住宅の需要が高まり、不動産価格が高騰しているので、今後の動向にも注意が必要です。
また金利が低い場合、高額なローンを比較的簡単に組めてしまうため、購入価格が高くなり、普段の生活が圧迫されることがないようにしましょう。
住宅ローン減税の引き下げの影響は?
2021年12月には、令和4年度税制改革大網で、住宅ローン減税をローン残高の1%から0.7%に引き下げることが発表されました。
今までは、年末の時点で4000万円のローン残高を返済中ならば、最大40万円が減税されていました。これが、0.7%に引き下げられれば、28万円の減税になってしまい実質12万円の負担増となります。
住宅ローン減税が適用されている10年間で最大120万円の負担増になります。
住宅ローン減税は、ローンを組んだときの制度が適用されるので、1%のいまのうちに住宅ローンを借りた方が得だという意見には頷けます。
しかし、適用年数が10年から13年に延長されたことで、控除額が納税額より多かった低所得者層には引き下げ前よりトータルの控除額が増える人もいますので、一概に負担増になるとは言い切れません。
すでに住宅の購入を決めておりローンを検討する際には、どちらが得なのか計算する必要があります。
計算が難しいようであれば、不動産会社や金融機関への相談を検討しましょう。
税制改正によって、住宅の購入が控えられれば住宅価格が下がり、控除額減額以上の値下がりがあるかもしれません。住宅ローン減税の引き下げだけを理由に住宅を購入するのは早計です。
実際の住宅ローンの借り入れどきは、個人個人の生活スタイルによってさまざまです。
住宅を購入するということは、生活を大きく変える出来事ですので、最終的には、個人のみで判断せず、不動産会社や金融機関のプロに相談することをおすすめします。