長引くコロナ禍のさなか、住宅建築業界にも影響が押し寄せています。
木材不足が世界的な問題になっているのです。
深刻な供給不足による価格の高騰が、かつてのオイルショックを彷彿とさせるためか、「ウッドショック」と呼ばれています。
ウッドショックの発生は複数の要因が絡み合っています。
アメリカや中国に端を発し、日本を含め世界中にも波及したその原因は何なのでしょうか。
ウッドショックの原因とは
ウッドショックによる木材の高騰は深刻で、アメリカでは3倍、日本では2倍にもなったケースがあります。
現在は一時期の異常な高騰よりは落ち着き始めていますが、それでも市場に流通する木材は従来の市場価格よりも大幅に上回っています。
原因の1つはアメリカや中国で起きた住宅バブルです。
コロナ禍でリモートワークが増加した社会情勢の中、地価の高い都会から少し離れた郊外での住宅購入や、自宅のリフォームが相次ぐようになりました。
このため市場が急激に活気づき、木材不足を招いたのです。
さらにアメリカでは経済の落ち込みを防ぐ一環として低金利政策を取ったため、ますます建築需要が加速されました。
もう1つの原因はコロナ禍の影響による貨物便の大幅な減便です。
輸入できる木材が極端に減少し、やはり価格高騰の大きな原因になっています。
当然、日本でも輸入材の不足が生じています。
日本の木材自給率は2019年で37.8%です。
年々自給率は伸びてはいますが、大半を輸入材に頼っています。
足りない輸入材の分を国産の木材で補おうとしましたが、もともと37%しかない木材が突然2倍になることはありません。
流通可能な国産材を奪い合うことになり、結果としてウッドショックが起こってしまったのです。
輸入材に頼る日本の事情
「輸入材も国産材も足りないのなら、もっと国産木材を増やせばいいじゃない」。
そう考える人もいるでしょう。確かに建設的な考え方です。
しかし日本にはそう簡単に国産材を増やせない事情があります。
1960年代に安価な輸入材が流通するようになり、国産材は需要と供給のバランスから減産体制に入りました。
また、日本の林業は経費がかかります。
その経費の多くを国からの補助金でまかなっている企業は少なくありません。
補助金なしで伐採すればするほど、赤字になるという実情を抱えている企業がほとんどです。
つまり、ウッドショックで伐採の注文が増加しても、同時に補助金が増えなければ赤字になる一方なのです。
国に早急な対策を望む声も少なくありません。
ただ、製造においては国産材の増産が確実に進められています。
いまだに供給が追いつかず、新規の受注が難しい状況ではあるようですが、ウッドショックの解消に向けて、国産材の製造工場は全力で稼働しています。
また、2021年4月、林野庁は住宅業界に対して買い占めや在庫の過剰化を控える要請を出しました。
木材価格の安定化のきっかけになることが期待されます。
住宅価格への影響は
材料が高騰する以上、住宅価格の高騰も懸念されています。
現在はまだ、あからまさな価格影響は出ていない状況です。
大手メーカーでは数年分の資材を優先的に調達するという契約を商社と結んでいることがあるため、当面は確保できていると考えられます。
しかし中小の工務店ではそうもいかない可能性が高く、先行きが不安定です。
何かと暗い事情に目を向けてしまう中、ウッドショックの解消に向けて努力する人々も大勢います。
確保ルートを拡大しようとしているメーカーがあります。
国産材の製造工場は全力稼働中です。
いずれ供給が安定することを願うばかりです。
まとめ
世界的なウッドショックの中、日本も例に漏れず、木材の高騰に見舞われています。
輸入材だけではなく国産材も不足しており、建築業界への影響が目立っています。
住宅価格への影響はまだ見られませんが、購入するタイミングに迷う人が出てもおかしくない状況でしょう。
しかし国産材は製造が進み、林野庁も調整に入っています。
ウッドショック解消に向けて取られているさまざまな方法を注視しながら、ベストな選択をしていきたいものです。